本記事では、オフィス選びで悩まれている経営者や総務担当者の方々に向けて、ビル構造の種類とそれぞれの特徴について解説します。木造、鉄骨造、RC造、SRC造など、主要な4種類のビル構造の特徴や、用途別におすすめの構造、選択時のポイントを詳しく紹介しますので、オフィス選びで迷われている方はぜひ参考にしてください。
4種類のビル構造とそれぞれの特徴
オフィスビルの構造は、建物の性能や特性に大きな影響を与えます。ここでは、主要な4種類のビル構造とその特徴について解説していきます。
ぞれぞれのビル構造について詳しくみていきます。
ビル構造① 木造(W造)
木造(W造)は、主に低層建築物に用いられるビル構造です。オフィスビルとしては比較的珍しい構造ですが、小規模なオフィスや複合施設では採用されることがあります。木造の特徴を詳しく見ていきましょう。
木造建築の耐震性は、適切な設計と施工によって確保されます。木材は軽量で柔軟性があるため、地震の揺れを吸収しやすい特性を持っています。しかし、高層建築には不向きであり、オフィスビルとしては2〜3階建て程度が一般的です。耐震補強や制震装置の導入により、さらなる耐震性の向上が可能となります。
木造建築の弱点として挙げられるのが耐火性です。木材は燃えやすい性質を持つため、火災に対する脆弱性があります。ただし、現代の木造建築では、耐火処理や不燃材料の併用によって耐火性能を向上させることもできます。オフィスビルとして借りる際は、耐火基準をクリアしているか必ず確認しましょう。
木造建築は他の構造と比べて防音性がやや劣ります。木材自体は音を吸収する性質がありますが、軽量構造であるため音の伝わりやすさが課題となります。オフィスとして使用する場合は、遮音材の使用や二重壁構造の採用など、追加の防音対策が必要になることが多いでしょう。
木造建築の建築コストは、他の構造と比較して比較的低く抑えられます。材料費が安価であることや、工期が短いことがその理由です。ただし、オフィスビルとして使用する場合は、耐火性能や防音性能を向上させるための追加コストが発生する可能性があります。また、木材の品質や希少性によってもコストが変動するため、必ず確認しておきましょう。
木造建築の大きな利点の一つが、短い工期です。材料が軽量で扱いやすく、プレカット工法などの効率的な施工方法が確立されているため、他の構造と比べて建設期間を大幅に短縮できます。オフィスビルの場合、早期の移転や営業開始が求められる場合には、この短い工期が大きなメリットとなるでしょう。
木造建築は、温かみのある自然な雰囲気を演出できる点が魅力です。木目の美しさを活かしたデザインや、木材特有の質感を内装に取り入れることができます。また、木材は加工が容易であるため、内装の自由度も高いと言えるでしょう。オフィスビルとしては、クリエイティブな空間や、リラックスできる雰囲気を求める企業に適しています。
ビル構造② 鉄骨造(S造)
鉄骨造(S造)は、オフィスビルや商業施設など、中高層建築物に広く採用される構造です。鉄骨の強度と軽量性を活かし、大空間の確保や高層化が可能となります。S造の特徴を詳しく見ていきましょう。
鉄骨造の耐震性は非常に高く評価されています。鉄骨の持つ強度と靭性により、地震の揺れに対して優れた抵抗力を発揮します。また、建物全体の重量が比較的軽いため、地震時の水平力を軽減できるという利点もあります。高層ビルの建設に適しており、適切な設計と施工により、高い耐震性能を実現することができるでしょう。
鉄骨造の耐火性については、適切な対策が必要です。鉄は高温で強度が低下するため、火災時の安全性確保が重要となります。そのため、耐火被覆や耐火塗料の使用が一般的です。これらの対策により、法令で定められた耐火時間を確保し、オフィスビルとしての安全性を担保することができます。近年では、新しい耐火技術の開発も進んでおり、より効果的な耐火対策が可能になっています。
鉄骨造の防音性は、構造自体ではやや劣る傾向にあります。鉄骨は音を伝えやすい性質があるため、オフィスビルとして使用する際は追加の防音対策が必要となることが多いでしょう。具体的には、遮音材の使用、二重壁や浮床構造の採用などが効果的です。これらの対策により、快適なオフィス環境を実現することができます。
鉄骨造の建築コストは、中程度と言えるでしょう。材料費は比較的高価ですが、工期の短縮や大空間の実現によるコスト削減効果もあります。また、鉄骨の製作を工場で行うため、現場での作業効率が高く、人件費を抑えられる利点もあります。ただし、耐火対策や防音対策のための追加コストが発生する可能性があるため、総合的な検討が必要です。
鉄骨造の大きな利点の一つが、短い工期です。工場での部材製作と現場での組み立てを並行して進められるため、建設期間を大幅に短縮できます。また、天候の影響を受けにくいという特徴もあります。オフィスビルの場合、早期の移転や営業開始が求められることが多いため、この短工期は大きなメリットとなるでしょう。
鉄骨造は、大空間の実現や自由な形状の設計が可能なため、デザイン性と内装の自由度が高いと言えます。柱や梁の配置に制約が少ないため、オープンなオフィスレイアウトや、フレキシブルな空間設計が可能です。また、外装材の選択肢も豊富で、ガラスや金属パネルなどを用いた現代的なデザインから、伝統的な外観まで幅広い表現が可能です。これらの特徴により、企業イメージに合わせた個性的なオフィスビルの実現が可能となります。
ビル構造③ 鉄筋コンクリート造(RC造)
鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋とコンクリートの特性を組み合わせた構造で、オフィスビルや集合住宅などに広く採用されています。堅牢性と耐久性に優れ、中層建築物に適しています。RC造の特徴を詳しく見ていきましょう。
RC造の耐震性は非常に高く評価されています。コンクリートの圧縮強度と鉄筋の引張強度を組み合わせることで、地震の揺れに対して優れた抵抗力を発揮します。また、建物全体の重量が大きいため、地震時の揺れを抑制する効果もあります。適切な設計と施工により、オフィスビルに求められる高い耐震性能を実現することができるでしょう。
RC造の耐火性は極めて高く、オフィスビルの構造として大きな利点となります。コンクリートは不燃材料であり、高温下でも強度低下が少ないため、火災時の安全性が確保されます。また、鉄筋をコンクリートで覆うことで、鉄筋の耐火性も向上します。これらの特性により、RC造は法令で定められた耐火時間を十分に満たすことができ、安全性の高いオフィス環境を提供することが可能です。
RC造の防音性は優れています。コンクリートの密度が高く、厚みのある壁や床を形成できるため、音の伝播を効果的に抑制することができます。オフィスビルとして使用する際は、この特性を活かし、静かで集中できる環境を実現できるでしょう。ただし、完璧な遮音性を求める場合は、追加の防音対策を検討する必要があるかもしれません。
RC造の建築コストは、中程度から高めと言えるでしょう。材料費は比較的安価ですが、現場での作業が多く、労務費がかかる傾向があります。また、型枠の製作や養生期間が必要なため、工期が長くなりやすく、それに伴うコスト増加も考慮する必要があります。ただし、長期的な視点では、耐久性が高く維持管理費が抑えられるため、ライフサイクルコストでは優位性があると言えます。
RC造の工期は、他の構造と比べてやや長くなる傾向があります。現場でのコンクリート打設や養生期間が必要なため、天候の影響を受けやすく、工程管理が重要となります。オフィスビルの建設では、この点を考慮し、十分な工期を確保する必要があるでしょう。ただし、近年では、プレキャストコンクリート工法などの採用により、工期短縮を図る取り組みも進んでいます。
RC造は、コンクリートの可塑性を活かし、多様な形状や意匠表現が可能です。曲面や複雑な形状も実現できるため、個性的なオフィスビルのデザインに適しています。内装については、壁や床の厚みを活かした収納スペースの確保や、重量物の設置が容易であるなどの利点があります。また、コンクリート打ち放しの仕上げを活かしたモダンな空間デザインも可能で、企業イメージに合わせた多様な内装表現が実現できるでしょう。
ビル構造④ 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、鉄骨造と鉄筋コンクリート造の利点を組み合わせた構造です。高層ビルや大規模オフィスビルに適しており、優れた強度と耐久性を誇ります。SRC造の特徴を詳しく見ていきましょう。
SRC造の耐震性は非常に高く、オフィスビルの構造として最も優れていると言えるでしょう。鉄骨の靭性と鉄筋コンクリートの剛性を組み合わせることで、地震の揺れに対して極めて高い抵抗力を発揮します。大規模な地震にも耐えうる構造であり、高層ビルや重要度の高い建築物に採用されることが多いです。オフィスビルとしては、最高レベルの安全性を提供することができます。
SRC造の耐火性も極めて高く評価されています。鉄骨をコンクリートで覆うことで、鉄骨の耐火性を大幅に向上させています。また、RC造と同様にコンクリート自体が不燃材料であるため、火災時の安全性が確保されます。これらの特性により、SRC造は厳しい耐火基準を満たすことができ、オフィスビルとして高い安全性を提供することが可能です。
SRC造の防音性は優れています。RC造と同様に、コンクリートの高い密度と厚みのある壁や床により、効果的に音の伝播を抑制することができます。さらに、鉄骨の振動吸収性能も加わるため、より高い遮音性能を実現できます。オフィスビルとして使用する際は、静かで快適な環境を提供することが可能でしょう。
SRC造の建築コストは、一般的に高めです。鉄骨と鉄筋コンクリートの両方の材料を使用するため、材料費が高くなります。また、施工にも高度な技術が必要となるため、労務費も増加する傾向にあります。ただし、高層化や大スパン化が可能であるため、土地の有効利用という観点では経済性があると言えるでしょう。オフィスビルとしては、長期的な使用を前提とした場合、その耐久性と維持管理の容易さから、ライフサイクルコストでの優位性があります。
SRC造の工期は、RC造より長くなる傾向があります。鉄骨の組み立てとコンクリート打設の両工程が必要で、施工に時間がかかります。コンクリートの養生期間も必要です。オフィスビル建設では、この長い工期を考慮した計画が必要です。ただし、近年はプレキャスト工法や新施工技術の導入により、工期短縮の取り組みも進んでいます。
SRC造は、鉄骨造とRC造の特性を併せ持ち、デザイン性と内装の自由度が高いです。大スパン構造により、柱の少ない開放的な空間を実現できます。高層化も容易で、ランドマークとなるオフィスビルの設計も可能です。内装は重量物の設置が容易で、自由度の高いレイアウトが可能です。外装材の選択肢も豊富で、現代的なデザインから伝統的な外観まで幅広い表現ができます。これらの特徴により、企業の要望に応じた個性的で機能的なオフィスビルを実現できます。
その他の構造(CB造、軽量鉄骨造、PCa造、CFT造など)
主要4種類以外にも、オフィスビルや商業施設に採用される構造があります。これらは特定の用途や条件に適しており、選択肢を広げます。
コンクリートブロック造(CB造)は小規模建築物に適し、安価で施工が容易です。軽量鉄骨造は低層建築物用で、工期が短くコスト効率が良いです。プレキャストコンクリート造(PCa造)は工場製作部材を現場で組立て、品質管理と工期短縮に効果があります。コンクリート充填鋼管構造(CFT造)は高い耐震性と耐火性を実現します。
これらの構造は特有の長所短所があり、建築目的、予算、立地条件を考慮して選択する必要があります。
ビルの用途別におすすめの構造
ビルの構造選択は用途によって大きく異なります。オフィスビル、商業施設、高層ビルそれぞれに適した構造を解説します。適切な構造選択が、建物の機能性と経済性を高める鍵となります。
オフィスビルに適した構造
オフィスビルには、S造(鉄骨造)とRC造(鉄筋コンクリート造)が多く採用されています。S造は大空間の確保や内装の自由度が高く、フレキシブルなレイアウトが可能です。工期も短いため、早期移転や営業開始に有利です。
RC造は耐火性と防音性に優れ、セキュリティや静かな環境が重視されるオフィスに適しています。長期使用を前提とした場合、耐久性が高く維持管理がしやすい利点があります。
中規模から大規模のオフィスビルでは、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)も選択肢となり、高い耐震性と大スパン構造で自由度の高い空間を実現できます。
商業施設に適した構造
商業施設でもS造とRC造が主流です。S造は大空間確保と内装自由度が高く、頻繁なレイアウト変更に適しています。工期が短いため、早期オープンにも有利です。
RC造は防音性と耐火性に優れ、映画館やホテルなど静かさや安全性が重視される施設に適しています。耐久性が高いため、長期運用を前提とした施設にも適しています。
大規模商業施設ではSRC造も選択肢となり、高い耐震性と大スパン構造で開放的な空間設計が可能です。高層化も容易で、複合商業施設の建設にも適しています。
高層ビルに適した構造
高層ビルではS造とSRC造が主に採用されています。S造は自重が軽く高層化に適し、工期も短く建設コストを抑えられます。技術革新により超高層ビルでもS造採用が増えています。
SRC造は高い耐震性と剛性を持ち、従来から高層ビルに広く採用されてきました。安全性と快適性を両立でき、特に超高層ビルや重要度の高い建築物で選ばれます。
最近ではCFT造(コンクリート充填鋼管構造)も増加しており、高い耐震性と耐火性、工期短縮、コスト削減を実現します。
高層ビルの構造選択では、耐震性だけでなく風荷重対策や居住性確保も重要です。建設地の条件や用途に応じて最適な選択が必要です。
ビルの構造を選ぶ際のポイント
ビルの構造選択は建物の性能、使い勝手、経済性に大きく影響します。ここでは、構造選択時の重要ポイントを解説します。これらを押さえることで、より適切な選択が可能となります。
立地条件と法規制の確認
まず考慮すべきは立地条件と法規制です。地盤状況、地震リスク、周辺環境によって適切な構造が異なります。軟弱地盤では基礎工事に特別な配慮が必要で、構造選択にも影響します。
建築基準法や都市計画法などの法規制も重要です。容積率、高さ制限、耐火基準によって選択できる構造が制限されることがあります。特に防火地域や準防火地域では、耐火性能の高い構造が求められます。
予算と工期の考慮
予算と工期は非常に重要な要素です。各構造には特有の建築コストと工期があり、十分な考慮が必要です。S造は工期が短く初期コストを抑えられますが、RC造は長期的な維持管理コストが低くなる傾向があります。
工期は、テナント入居時期や事業計画との整合性を考慮することが重要です。急ぎの案件では工期の短いS造が有利かもしれません。予算と工期のバランスを取りながら、最適な構造を選択することが求められます。
将来的な用途変更の可能性
将来的な用途変更の可能性も考慮すべきポイントです。S造は大スパン構造が可能で内装の自由度が高く、レイアウト変更や用途変更に柔軟に対応できます。RC造は耐久性が高く、長期的な使用に適しています。
増築や改修の可能性も考慮すべきでしょう。SRC造は高い耐震性と耐久性を持ち、将来的な増築にも対応しやすい構造です。将来のニーズ変化を予測し、対応できる構造を選択することが、ビルの長期的な価値を高めることにつながります。
ビル構造の専門用語解説
ビルの構造を理解する上で、専門用語の知識は欠かせません。ここでは、よく使われる構造の専門用語について解説します。これらの用語を理解することで、ビルの構造についてより深い知識を得ることができるでしょう。
ラーメン構造とブレース構造
ラーメン構造は、柱と梁を剛接合して框(かまち)状の骨組みを形成する構造です。地震や風などの水平力に対して、骨組み全体で抵抗します。オフィスビルでよく見られる構造で、大空間の確保が容易です。
一方、ブレース構造は、柱と梁の骨組みに斜めの部材(ブレース)を入れて補強する構造です。水平力に対する抵抗力が高く、建物の変形を抑えることができます。工場や倉庫などでよく使用されますが、オフィスビルでも採用されることがあります。
壁式構造とフラットスラブ構造
壁式構造は、耐力壁を主要な構造体とする構造です。壁が荷重を支えるため、柱のない開放的な空間を作ることができます。主に集合住宅やホテルなどで採用されますが、小規模なオフィスビルでも使用されることがあります。
フラットスラブ構造は、柱で直接スラブ(床板)を支える構造です。梁がないため、階高を抑えつつ天井高を確保できる利点があります。また、設備配管の自由度が高く、オフィスビルのフレキシブルな空間設計に適しています。
コア構造とチューブ構造
コア構造は、建物の中心部に耐震壁や設備シャフトを集中させた構造です。周辺部の空間を自由に使えるため、オフィスビルや高層ビルでよく採用されます。エレベーターや階段、設備スペースを効率的に配置できる利点があります。
チューブ構造は、建物の外周部に構造体を集中させ、中心部を自由な空間とする構造です。超高層ビルでよく採用され、風や地震に対する高い抵抗力を持ちます。外周部の柱を密に配置することで、建物全体で荷重を支える仕組みです。
まとめ|立地やコスト等の条件を考えてビル構造を選択しましょう
ビルの構造選択は、建物の性能や使い勝手、経済性に大きく影響します。木造、S造、RC造、SRC造など、主要な構造タイプにはそれぞれ特徴があり、用途や条件に応じて適切に選択する必要があります。
選択の際は、立地条件や法規制、予算と工期、将来的な用途変更の可能性などを総合的に考慮することが重要です。また、専門用語の理解を深めることで、より適切な判断が可能になります。
オフィスビルの構造選択においては、企業のニーズや将来のビジョンを踏まえ、長期的な視点で検討することが大切です。適切な構造選択が、快適で効率的なオフィス環境の実現につながるでしょう。

