オフィス移転を検討中の経営者や総務担当者の方々に向けて、近年注目を集める「居抜きオフィス」について徹底解説します。居抜きオフィスは、移転コストの削減や期間短縮などのメリットがある一方で、レイアウトの制約や設備の老朽化といったデメリットも存在します。本記事では、居抜きオフィスの基礎知識から、セットアップオフィスとの違い、物件選びのポイントまで詳しく解説していきます。移転費用を抑えながら理想的なオフィス環境を実現したい方は、ぜひ参考にしてください。
居抜きオフィスとは
居抜きオフィスは、前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま活用できるオフィス形態を指します。一般的なオフィス物件では、新規入居時に内装工事や設備の設置が必要となりますが、居抜きオフィスではこれらの工事を最小限に抑えることが可能です。このため、移転時の工事費用や工期を大幅に削減できる点が特徴となっています。特に近年は、コスト削減や移転期間の短縮を重視する企業が増加しており、オフィス移転の新たな選択肢として注目を集めています。また、既存の内装や設備を再利用することで、環境負荷の低減にも貢献できることから、SDGsの観点からも評価されています。企業のニーズとサステナビリティの両面から、居抜きオフィスの重要性は高まっているのです。
【余談】「居抜き」の定義は?
「居抜き」という言葉は、もともと飲食店業界で使われていた用語です。店舗の内装や厨房設備などをそのまま引き継いで営業を開始することを指していました。この考え方がオフィス市場にも広がり、前テナントの内装や設備をそのまま利用する形態が「居抜きオフィス」として定着しました。具体的には、オフィスの間仕切りや天井、床材といった内装に加え、エアコンや照明設備、さらにはオフィス家具や什器などが含まれる場合もあります。これらの設備や内装を新たに設置する必要がないため、迅速な事業開始が可能となるのが特徴です。また、造作物の譲渡契約を結ぶことで、前テナントと新テナントの双方にメリットが生まれる仕組みとなっています。
近年注目される背景と理由
居抜きオフィスが注目を集める最大の要因は、内装工事費の高騰にあります。建設資材の価格上昇や人手不足による人件費の増加により、オフィスの内装工事費用は年々上昇傾向にあります。加えて、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、オフィスのダウンサイジングや移転を検討する企業が増加したことも、居抜きオフィスへの関心を高める要因となっています。特にスタートアップ企業やベンチャー企業にとって、初期投資を抑えながら事業環境を整えられる居抜きオフィスは魅力的な選択肢となっています。また、オフィス市場全体の流動性が高まる中で、物件オーナーも居抜き形式での賃貸を積極的に検討するようになってきており、供給面での充実も進んでいます。
居抜きオフィスが特に向いている企業
居抜きオフィスは、全ての企業に適しているわけではありません。特に、初期投資の抑制や迅速な移転を重視する企業との相性が良いと言えます。スタートアップ企業やベンチャー企業は、資金を効率的に活用しながら迅速な事業展開が求められるため、居抜きオフィスの特徴を最大限に活かすことができます。また、オフィスのダウンサイジングを検討している企業や、一時的な利用を想定している企業にとっても、コストパフォーマンスの高い選択肢となるでしょう。加えて、環境負荷の低減に積極的な企業や、SDGsへの取り組みを重視する企業にとっても、居抜きオフィスは魅力的な選択肢となります。ただし、ブランドイメージを重視する企業や、特殊な設備や内装が必要な企業の場合は、慎重な検討が必要となることにも注意が必要です。
セットアップオフィスとの違い
セットアップオフィスと居抜きオフィスは、どちらも内装や設備が整った状態で借りられる点では似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。セットアップオフィスは不動産会社が計画的に内装を施工し、新品の設備を設置しているのに対し、居抜きオフィスは前テナントが使用していた内装や設備をそのまま活用します。また、セットアップオフィスは月額賃料に内装工事費が含まれているため割高になる傾向がありますが、居抜きオフィスは通常の賃貸オフィスと同程度の賃料で利用できることが多いのが特徴です。さらに、セットアップオフィスは一般的に築浅物件に多く、内装や設備の品質が保証されている一方、居抜きオフィスは物件によって状態にばらつきがあることも把握しておく必要があります。
居抜きオフィスのメリット
居抜きオフィスには、企業の移転コスト削減や業務効率化につながる様々なメリットがあります。中でも特に注目すべきなのが、初期費用の削減と移転期間の短縮です。また、環境負荷の低減にも貢献できることから、SDGsの観点からも評価されています。それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
初期費用を大幅に削減できる
通常のオフィス移転では、内装工事や設備の設置に多額の費用が必要となります。一般的な内装工事費は坪あたり20〜30万円程度で、100坪のオフィスの場合、2,000万円以上の費用が発生することも珍しくありません。これに対して居抜きオフィスでは、前テナントの内装や設備をそのまま活用できるため、内装工事費を大幅に抑えることが可能です。什器備品も譲り受けられる場合は、オフィス家具の購入費用も削減できます。特にスタートアップ企業や事業拡大期の企業にとって、この初期費用の削減効果は非常に大きなメリットとなっています。
移転期間の短縮が可能
一般的なオフィス移転では、内装工事に1〜2ヶ月、設備の設置や什器の搬入に2週間程度かかることが一般的です。これに対して居抜きオフィスでは、大規模な工事が不要なため、契約から入居までの期間を大幅に短縮できます。物件の状態にもよりますが、最短で契約から1週間程度での入居も可能です。また、工事期間中の仮移転が不要なため、二重の移転コストや手間を避けることができます。迅速な事業展開が求められる現代のビジネス環境において、この移転期間の短縮は大きなアドバンテージとなるでしょう。
すぐに業務を開始できる
居抜きオフィスの大きな特徴は、必要最小限の準備だけですぐに業務を開始できる点です。通常のオフィス移転では、内装工事の完了後もレイアウトの調整や備品の設置、インターネット環境の整備など、実際の業務開始までに様々な準備が必要となります。しかし居抜きオフィスでは、これらの環境が既に整っているため、スムーズな業務移行が可能です。特に電源配線やLANケーブルなどのインフラ設備が整っていることは、IT企業やクリエイティブ企業にとって大きなメリットとなっています。
SDGsへの貢献につながる
居抜きオフィスの活用は、環境負荷の低減にも大きく貢献します。通常のオフィス移転では、前テナントの内装や設備の撤去・廃棄が必要となり、大量の産業廃棄物が発生します。これに対して居抜きオフィスでは、既存の設備や内装を再利用することで、廃棄物の発生を最小限に抑えることができます。また、新たな内装工事や設備の製造・設置が不要なため、CO2排出量の削減にもつながります。SDGsへの取り組みが企業価値の重要な要素となる中、このような環境配慮の姿勢は社会的な評価にもポジティブな影響を与えるでしょう。
居抜きオフィスのデメリット
居抜きオフィスには様々なメリットがある一方で、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。物件選びの際には、レイアウトの制約や設備の状態、退去時の条件などについて慎重に検討する必要があります。ここでは主要なデメリットについて詳しく解説していきます。
希望通りのレイアウトが見つかりにくい
居抜きオフィスの最大のデメリットは、自社の理想とするレイアウトの物件を見つけることが難しい点です。前テナントの業態や企業規模に合わせて設計された内装や間取りをそのまま使用することになるため、自社の働き方や組織構造に完全に適合する物件は限られています。例えば、オープンスペースを重視する企業が個室の多いレイアウトの物件を選ぶ場合、大規模な改装が必要となり、かえってコストが増大する可能性があります。また、物件自体の供給数も一般の賃貸オフィスと比べて少ないため、希望するエリアや規模の物件を見つけるまでに時間がかかることもあるでしょう。
設備や内装の老朽化リスク
居抜きオフィスでは、前テナントが使用していた設備や内装をそのまま引き継ぐため、その状態や経年劣化について十分な確認が必要となります。特にエアコンや電気設備、通信設備などの重要インフラは、使用年数や保守状態によっては、入居後すぐに修理や交換が必要となるケースもあります。また、内装材や床材、天井材などの劣化も見落としがちですが、これらの修繕費用は予想以上に高額になることがあります。さらに、前テナントの使用状況によっては、清掃や補修に追加のコストが発生する可能性もあるため、事前の状態確認が非常に重要となってきます。
退去時の原状回復が必要な場合がある
居抜きオフィスの退去時には、予想以上のコストが発生する可能性があります。一般的な賃貸借契約では、退去時に原状回復を求められることが多く、居抜きオフィスも例外ではありません。特に注意が必要なのは、前テナントの原状回復義務も引き継いでしまうケースです。この場合、自社が行った変更だけでなく、前テナントの造作物や内装についても原状回復が必要となる可能性があります。また、長期間の使用で劣化が進んだ設備や内装は、想定以上の修繕費用が必要となることもあります。契約前には、退去時の条件や原状回復の範囲について、しっかりと確認しておくことが重要でしょう。
居抜きオフィスの選び方
居抜きオフィスを選ぶ際には、複数の重要なポイントを確認する必要があります。内装や設備の状態、造作物の譲渡条件、通信環境、そして退去時の原状回復義務など、細かなチェックが必要な項目が多岐にわたります。これらの確認を慎重に行うことで、将来的なトラブルや予期せぬコストの発生を防ぐことができます。
内装・設備の確認ポイント
内装や設備の状態確認は、居抜きオフィス選びで最も重要なポイントとなります。まずは天井や壁、床材の状態を細かくチェックし、汚れや傷、剥がれなどの有無を確認します。特にエアコンや電気設備については、設置年数や過去の修繕履歴を必ず確認しましょう。また、給排水設備のある場合は水漏れや詰まりがないかの確認も重要です。照明器具については、LEDへの交換状況や器具の劣化状態もチェックが必要です。さらに、防火設備や非常口、消火器の設置状況など、安全面に関わる設備についても入念な確認が求められます。
造作物の譲渡契約について
造作物の譲渡契約は、前テナントと新テナントの間で結ばれる重要な契約です。譲渡の対象となる造作物の範囲や価格、支払い条件などを明確に定める必要があります。特に注意すべきは、造作物の権利関係と瑕疵担保責任の範囲です。譲渡後に不具合が見つかった場合の対応や、修繕費用の負担についても事前に取り決めておくことが重要です。また、造作物の撤去や処分が必要となった場合の費用負担についても、契約書に明記しておくべきでしょう。仲介業者や弁護士のアドバイスを受けながら、慎重に契約内容を検討することをお勧めします。
インターネット環境の確認事項
現代のビジネスにおいて、安定したインターネット環境は必要不可欠です。居抜きオフィスの場合、既存の通信設備を利用できる反面、様々な確認が必要となります。まずは建物内の光回線の配線状況や、各フロアの配線容量を確認します。前テナントが使用していた回線の種類や速度、さらには建物内のMDF(主配線盤)からオフィスまでの配線ルートも重要なチェックポイントです。また、社内のWi-Fi環境を構築する際の電波状況や、セキュリティ面での制約についても事前に把握しておく必要があるでしょう。
原状回復義務の確認方法
原状回復義務の確認は、将来的なコスト試算のために非常に重要です。まずは賃貸借契約書の原状回復条項を詳細に確認し、具体的にどの部分が原状回復の対象となるのかを明確にする必要があります。前テナントの原状回復義務が引き継がれる場合は、その範囲と内容について書面で確認することが重要です。また、原状回復工事の際の具体的な仕様や、工事業者の指定の有無についても確認が必要です。さらに、原状回復費用の概算見積もりを事前に取得しておくことで、将来的な資金計画も立てやすくなります。これらの確認は必ず書面で行い、後々のトラブル防止に努めましょう。
まとめ
居抜きオフィスは、内装工事費用の削減や移転期間の短縮など、多くのメリットを提供する選択肢として注目を集めています。特に、初期費用の削減や迅速な業務開始を重視する企業にとって、非常に魅力的なオプションとなるでしょう。一方で、レイアウトの制約や設備の老朽化リスク、退去時の原状回復義務など、考慮すべき課題も存在します。物件選びの際には、内装・設備の状態、造作物の譲渡条件、通信環境、原状回復の範囲など、様々な観点からの慎重な検討が必要です。自社のニーズや予算、事業計画を総合的に考慮し、居抜きオフィスが最適な選択肢となるか、十分に検討することをお勧めします。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に意思決定を進めていくことが、成功的なオフィス移転の鍵となるでしょう。

