オフィス移転では、様々な専門用語が飛び交い、初めて移転を担当する方は戸惑うことも多いでしょう。この記事では、オフィス移転でよく使用される用語を、分野別に分かりやすく解説していきます。移転プロジェクトを進める際の参考にしてください。
契約に関する用語
オフィスの賃貸借契約では、様々な専門用語が使用されます。特に重要な用語について、実務的な観点から解説していきます。
敷金
賃料の未払いや原状回復費用などの債務を担保するために、契約時に貸主に預け入れる保証金のことです。オフィスの場合、一般的に賃料の6~12ヶ月分が相場となっています。契約終了時に債務を差し引いた残額が返還されますが、返還までには一定期間を要します。居住用の物件と比べて金額が大きいのが特徴です。
保証金
敷金と似た性質を持つ預り金ですが、契約終了時にあらかじめ定められた一定額を償却することを前提としている点が異なります。特に大手デベロッパーの物件では保証金という形式を採用することが多く、20~30%程度の償却が一般的です。敷金より契約の自由度が高く、当事者間の合意で様々な条件を設定できます。
契約期間
賃貸借契約の有効期間を指します。オフィスの場合、標準的な契約期間は2年または3年です。ただし、大規模物件では5年以上の契約期間を設定することも一般的です。契約期間は賃料や保証金の条件にも影響を与えるため、事業計画と照らし合わせて慎重に検討する必要があります。
定期建物賃貸借契約
契約期間の満了により確定的に契約が終了する形式の賃貸借契約です。一般的な賃貸借契約と異なり、契約の更新がなく、継続して使用する場合は再契約が必要となります。オフィスビルでは、賃料の維持や計画的な建替えを可能にするため、この契約形式が増加しています。
普通賃貸借契約
契約期間が満了しても正当な理由がない限り、貸主は更新を拒否できない契約形式です。借主は法律で保護され、契約の継続が原則となります。ただし、老朽化による建替えなど、正当な事由がある場合は契約を終了することができます。オフィスでは、新しい物件を中心に定期建物賃貸借契約が主流になっています。
賃料に関する用語
オフィス契約における賃料は、様々な計算方法や付随する費用があります。ここでは賃料に関連する重要な用語を解説します。
坪単価
オフィスの賃料を1坪(約3.3平方メートル)あたりの金額で表示した単価です。例えば、坪単価20,000円の物件で100坪の場合、月額賃料は200万円となります。エリアや建物のグレードによって大きく異なり、都心部の新築ビルでは数万円、郊外の既存ビルでは数千円台と幅があります。
共益費
建物の共用部分の維持管理に必要な費用のことです。エレベーター、空調、照明などの設備の運転・保守費用、清掃費、警備費などが含まれます。一般的に賃料の15~20%程度に設定されることが多く、月額賃料とは別に請求されます。物件によって含まれる内容が異なるため、契約前の確認が重要です。
フリーレント
一定期間の賃料を無料または減額する制度です。内装工事期間中の賃料免除や、テナント誘致の営業施策として活用されます。例えば「3ヶ月フリーレント」の場合、契約開始から3ヶ月間は賃料が無料となります。ただし、共益費は通常通り発生することがほとんどです。
エスカレーション条項
契約期間中に段階的に賃料を増額する特約のことです。一般的に年率1~2%程度の上昇率が設定されます。長期契約の場合に設定されることが多く、将来的な物価上昇や維持管理費の増加に対応するための条項です。収支計画を立てる際は、この賃料上昇も考慮する必要があります。
内装工事に関する用語
オフィスの内装工事には、様々な区分や専門用語があります。工事の発注や費用負担を正しく理解するために、基本的な用語の把握が重要です。
A工事
ビルの基本設備工事を指し、一般的に貸主の負担で行われる工事です。空調設備、照明器具、スプリンクラー、防災設備など、ビルの基本的な設備の設置や変更が含まれます。これらは通常、賃料に工事費用が含まれる形で設定されています。
B工事
テナントの要望に応じて行われる工事で、通常は借主負担となります。パーティションの設置、床カーペットの敷設、特別な照明器具の設置など、テナント専用の内装工事が該当します。退去時には原状回復が必要となる場合が多いため、工事計画時に考慮が必要です。
C工事
テナント持込の家具や什器、OA機器などの設置工事を指します。完全に借主負担となり、退去時には撤去が必要です。例えば、大型サーバーの設置、受付カウンターの造作、特注家具の取付けなどが該当します。
スケルトン
内装や設備がない、建物の骨組みだけの状態を指します。柱や梁、床スラブ、外壁などの構造体のみの状態で、テナントが自由にレイアウトできる利点があります。ただし、電気配線や空調設備など、基本設備の設置費用が必要となるため、工事費用が高額になる傾向があります。
造作
建物に固定して取り付けられた設備や内装のことです。受付カウンター、造り付けの収納、間仕切り壁などが該当します。これらは通常、借主の負担で設置し、契約終了時には撤去するか、貸主と協議の上で残置することになります。建物価値を上げる造作は、買取の交渉も可能です。
OAフロア
コンピューターなどのOA機器の配線を床下に通すため、既存の床の上に設置する二重床のことです。床下には電源ケーブルや通信ケーブルを収納でき、レイアウト変更にも柔軟に対応できます。一般的な高さは50~100mm程度で、設置により天井高が若干低くなる点に注意が必要です。
設備に関する用語
オフィスビルの設備は、業務効率や快適性に直結する重要な要素です。主要な設備用語について、実務的な観点から解説していきます。
個別空調
各テナントが独自に空調を管理できるシステムです。営業時間外の空調利用や温度設定が自由にでき、電気料金は実使用分のみの請求となります。ただし、空調機器のメンテナンス費用は通常テナント負担となり、フロア全体を均一な温度に保つのが難しい場合があります。
セントラル空調
ビル全体で一括管理される空調システムです。24時間稼働の事務所でも安定した空調環境が保てる一方、個別の温度調整には制限があります。稼働時間は通常、平日の8時~18時などと決められており、時間外の利用には追加料金が発生することが一般的です。
電気容量
オフィスで使用可能な電力の最大値のことで、VA(ボルトアンペア)/㎡で表示されます。一般的なオフィスでは40~60VA/㎡程度ですが、サーバールームなど大量の電力を使用する場合は、追加工事が必要になることがあります。
床荷重
床が安全に支えられる重さの限度のことで、1平方メートルあたりの重量で表示されます。一般的なオフィスでは300~500kg/㎡が標準ですが、サーバーや金庫など重量物を設置する場合は、床荷重の確認が必須です。制限を超える場合は補強工事が必要となり、設置場所が制限される可能性もあります。
スプリンクラー
火災時に自動的に散水する消防設備です。オフィスビルでは法令により設置が義務付けられており、ヘッド(散水口)の位置や数は法規制で定められています。内装工事の際は、パーティションの配置などでヘッドの散水範囲を妨げないよう注意が必要です。また、誤作動による水損事故を防ぐため、定期的な点検も重要です。
原状回復に関する用語
退去時の原状回復は、予想以上のコストがかかる可能性があります。関連する用語を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
原状回復費用
契約終了時に、借主が負担する建物の現状復帰に要する費用です。内装の撤去、壁や床の補修、設備の交換など、契約書で定められた範囲の工事費用が含まれます。一般的なオフィスでは、賃料の4~8ヶ月分程度が相場となりますが、大規模な改装を行った場合はそれ以上になることもあります。
既存不適格
建築後に法令が改正され、現行の建築基準法に適合しなくなった建物の状態を指します。違法ではありませんが、大規模な改装工事を行う際には、現行法に適合させるための追加工事が必要になる場合があります。特に防火区画や避難経路に関する規定は要注意です。
経年劣化
時間の経過とともに、建物や設備が自然に劣化することを指します。通常の使用による摩耗や劣化は借主の負担とはならず、原状回復の対象外となります。ただし、何が経年劣化で何が借主の責任による損傷かの判断が難しく、貸主との認識の違いがトラブルの原因となることがあります。
引き渡し条件
入居時と退去時の物件の状態に関する取り決めです。スケルトン渡し、現状有姿渡しなど、条件によって原状回復の範囲や費用が大きく変わります。契約前に必ず確認し、書面で明確にしておくことが重要です。
物件情報に関する用語
オフィス物件を探す際によく目にする専門用語について解説します。面積の表示方法や建物の仕様を正しく理解することで、適切な物件選びが可能になります。
貸室面積
実際に賃借できるオフィススペースの面積を指します。一般的に壁芯(壁の中心線)で計算され、柱や梁の面積も含まれます。賃料や共益費の計算基準となる重要な数値です。なお、エレベーターホールや共用廊下などの共用部分は含まれません。
専有面積
テナントが専用で使用できる床面積のことです。貸室面積とは異なり、柱や梁の面積は含まれないため、実際に使用できる面積を把握する際の目安となります。レイアウトを検討する際は、この専有面積を基準に考える必要があります。
基準階
オフィスビルの標準的な間取りとなる階を指します。通常、2階より上の中層階で、同一形状が連続する階のことです。基準階の面積や形状は、ビルの使い勝手を判断する重要な要素となります。
天井高
床から天井までの実際の高さを指します。一般的なオフィスビルでは2.5~2.8m程度ですが、大規模ビルやグレードの高いビルでは3m以上確保されていることもあります。OAフロアを設置すると実質的な天井高が下がるため、内装計画時には注意が必要です。
コア
エレベーター、階段、トイレ、給湯室などの共用設備が集中して配置されている部分を指します。コアの位置はオフィスレイアウトに大きく影響し、中央コア型と片寄せコア型があります。中央コア型は効率的な動線が確保できる一方、片寄せコア型は広い専有面積が確保できる特徴があります。
まとめ
オフィス移転では、契約から内装工事、設備、原状回復まで、様々な専門用語を理解する必要があります。これらの用語は、コストや業務効率に直結する重要な要素となります。移転プロジェクトを成功させるためには、基本的な用語をしっかり理解し、適切な判断ができるようにすることが大切です。不明な点がある場合は、不動産会社や内装工事会社など、専門家に相談することをお勧めします。

