オフィスを借りる際に最も大きな初期費用となるのが敷金(保証金)です。
オフィスの敷金相場は賃料の3〜12ヶ月分。たとえば都心5区で30坪のオフィスを借りる場合、月額賃料66万円×敷金6ヶ月で約396万円が必要になります。100坪規模になると1,000万円を超えることも珍しくありません。
しかし近年は、敷金減額サービスの普及により敷金0円で入居できる物件が急増しています。当社(Growth Office)でも敷金0円物件を333件以上取り扱っています。
この記事では、オフィス敷金の規模別相場から、退去時の返還額シミュレーション、2026年の市場環境が敷金に与える影響、そして敷金負担を最小化する4つの方法まで、具体的な数字とともに解説します。
オフィスの敷金相場【規模別・ビルグレード別の早見表】
オフィスの敷金は、物件の規模やビルのグレードによって大きく異なります。以下の早見表で、自社の想定規模に近い金額感を把握してください。
※都心5区の既存ビル平均賃料22,000円/坪(出典:三鬼商事 2026年1月)をベースに算出しています。
| オフィス規模 | 月額賃料の目安 | 敷金3ヶ月 | 敷金6ヶ月 | 敷金12ヶ月 |
|---|---|---|---|---|
| 10坪(〜5人) | 22万円 | 66万円 | 132万円 | 264万円 |
| 30坪(〜15人) | 66万円 | 198万円 | 396万円 | 792万円 |
| 50坪(〜25人) | 110万円 | 330万円 | 660万円 | 1,320万円 |
| 100坪(〜50人) | 220万円 | 660万円 | 1,320万円 | 2,640万円 |
| 200坪(〜100人) | 440万円 | 1,320万円 | 2,640万円 | 5,280万円 |
一般的な目安として、50坪未満の小〜中規模オフィスは敷金3〜6ヶ月、50坪以上の中〜大規模オフィスは敷金6〜12ヶ月を求められるケースが多くなります。大手デベロッパーが管理するグレードの高いビルほど敷金月数が多い傾向にあります。
敷金と保証金の違いは?法律上の定義と実務
2020年民法改正で「敷金」の定義が明文化された
2020年4月施行の改正民法(民法第622条の2)では、敷金が法律上初めて明確に定義されました。条文では「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」とされています。
つまり、「保証金」「敷金」「権利金」など名称が異なっていても、賃借人の債務を担保する目的で預けるお金であれば、法律上はすべて「敷金」として扱われます。
保証金=敷金と考えてよいケースと注意すべきケース
現在の実務では、保証金と敷金に実質的な違いはほぼありません。どちらも退去時に原状回復費用や未払い賃料を差し引いた上で返還されます。
ただし注意が必要なのは、保証金の中に「建設協力金」としての性質が含まれているケースです。大型商業施設やロードサイド店舗などでは、保証金の一部がビル建設費用に充てられており、返還条件が通常の敷金と異なることがあります。オフィスビルの場合はほぼ該当しませんが、契約書の確認は怠らないようにしましょう。
敷引(償却)の仕組みと相場
敷引(償却)とは、退去時に敷金から無条件で差し引かれる金額のことです。相場は賃料の1〜2ヶ月分、または敷金総額の10〜20%程度に設定されることが多くなっています。
たとえば月額賃料50万円・敷金6ヶ月(300万円)・償却2ヶ月の場合、退去時に原状回復費用などの控除とは別に100万円が自動的に差し引かれます。近年はテナント誘致の観点から償却を設定しない物件も増えていますので、契約前に必ず確認してください。
なぜオフィスの敷金は住宅より高いのか
原状回復費用が桁違い
住宅の原状回復は、ハウスクリーニングや壁紙の張替え程度で済むことが大半で、費用は数万円〜十数万円程度です。一方、オフィスの原状回復は間仕切り撤去、天井・床・壁の復旧、電気配線の撤去など大がかりな工事が必要で、費用は坪あたり3〜10万円が一般的な相場です。30坪のオフィスでも90〜300万円かかる計算になります。
ビルのグレードが高い場合は坪15〜20万円に達することもあり、貸主はこうした高額な原状回復費用に備えて、住宅より多い月数の敷金を求めるのです。
賃料滞納・事業撤退リスクへの備え
オフィスの賃料は住宅と比べて高額です。月額100万円以上の賃料も珍しくなく、テナント企業の業績悪化や事業撤退によって賃料が回収できなくなるリスクは、住宅賃貸よりもはるかに大きくなります。
敷金6〜12ヶ月分という設定は、万が一テナントと連絡が取れなくなった場合でも、数ヶ月分の賃料と原状回復費用をカバーできるように設計されています。
内装工事の自由度が高い分、復旧コストも高い
オフィスでは、入居時に企業のブランドや業態に合わせた内装工事(間仕切り、会議室の設置、OAフロア施工など)を行うことが一般的です。住宅ではこうした大規模な改変はまず行いません。入居中に加えた変更が大きいほど、退去時に「元に戻す」ための費用も膨らむため、敷金が高く設定されるのです。
退去時に敷金はいくら返ってくる?返還額のシミュレーション
返還額の計算式
退去時に返還される敷金は、以下の計算式で算出されます。
返還額 = 預けた敷金 − 償却費 − 原状回復費 − 未払い費用
民法上、賃貸借契約が終了し物件を明け渡した時点で、貸主は敷金から債務を差し引いた残額を返還する義務があります(民法第622条の2第1項)。
規模別の返還額シミュレーション
都心5区の平均的なオフィスを想定し、退去時にいくら戻ってくるかを試算します。
| 項目 | 30坪(敷金6ヶ月) | 50坪(敷金6ヶ月) | 100坪(敷金6ヶ月) |
|---|---|---|---|
| 預けた敷金 | 396万円 | 660万円 | 1,320万円 |
| 償却費(敷金の15%) | ▲59万円 | ▲99万円 | ▲198万円 |
| 原状回復費(坪5万円) | ▲150万円 | ▲250万円 | ▲500万円 |
| 未払い費用等 | ▲0円 | ▲0円 | ▲0円 |
| 返還額 | 187万円 | 311万円 | 622万円 |
| 返還率 | 約47% | 約47% | 約47% |
一般的なオフィスの場合、預けた敷金の40〜60%程度が返還されるのが実態です。原状回復費が想定以上に膨らむと返還率はさらに低下します。
返還額が減る5つの要因
返還額を左右する主な控除項目は以下の5つです。
- 償却費:契約時に定められた無条件控除。賃料1〜2ヶ月分 or 敷金の10〜20%
- 原状回復工事費:入居時の状態に戻す工事費。坪3〜10万円が目安
- 未払い賃料・共益費:退去時点で未精算の費用
- 付帯設備の修繕費:使用方法の誤りや管理不足による故障の修繕
- 違約金:契約期間満了前の解約時。賃料1〜3ヶ月分が一般的
返還トラブルの実例と対策
敷金返還をめぐるトラブルは全国で年間1万件以上発生しています(出典:原状回復費.com)。
実例:敷金300万円がほぼゼロに
あるオフィスでは、入居時に約300万円の敷金を預けていましたが、退去時に提示された原状回復費用の見積もりが209万円+電球交換33万円の計242万円。償却費と合わせると敷金がほぼ全額消える計算でした。専門家に査定を依頼した結果、適正価格は140万円程度と判明し、約100万円の削減に成功しています。
実例:見積もり950万円が37.5%削減
美容サロンの事例では、初期内装に1,430万円を投じた物件で原状回復費950万円の見積もりが提示されました。専門機関の査定により適正額は572〜626万円と判定され、最終的に356万円の削減を実現しています。
対策としては、退去の3〜6ヶ月前から準備を始め、原状回復の見積もりは必ず専門業者のセカンドオピニオンを取ることが重要です。
2026年の市場環境が敷金に与える影響
空室率0.9%で敷金交渉が困難に
2026年現在、東京Aグレードオフィスの空室率は0.9%と過去最低水準にあります(出典:JLL)。丸の内・大手町エリアに至っては0.1%とほぼ満室状態です。
空室率が低いということは、オーナー側に「テナントを選べる」余裕があるということです。以前は敷金の月数交渉や減額交渉が通りやすい時期もありましたが、現在の市場環境ではオーナー側が提示した条件をそのまま受け入れざるを得ないケースが増えています。
賃料上昇に連動して敷金額も増加傾向
三鬼商事のデータによると、都心5区の平均賃料は24ヶ月連続で上昇し、前年比+7.5%の上昇を記録しています。敷金は賃料の月数倍で計算されるため、賃料が上がれば敷金額も自動的に増加します。
たとえば30坪・敷金6ヶ月の場合、賃料が坪22,000円から23,650円に上がると、敷金は396万円から425万円へと約30万円増加します。移転を先送りにするほど、敷金負担も膨らむリスクがあるのです。
一方で「敷金0円」物件は急増中
市場全体では敷金が上昇傾向にある一方で、保証会社を活用した「敷金0円」物件は着実に増えています。当社(Growth Office)の取り扱い物件では、敷金0円で入居可能な物件が333件・135棟に上ります。
これは、オーナー側が保証会社のバックアップにより敷金を減額しても安心して貸し出せる仕組みが整ってきたことの表れです。特にスタートアップや成長フェーズの企業にとって、数百万円の敷金が不要になるインパクトは非常に大きいといえます。
敷金を抑える4つの方法
①敷金0円・敷金減額サービスを活用する
オフィス敷金の負担を最も大きく削減できるのが、保証会社による敷金減額サービスです。保証会社がオーナーに対して借主の債務を保証することで、通常6〜12ヶ月の敷金を半額〜0円にまで引き下げることができます。
借主が支払うのは、削減された敷金額に対して年間5%程度の保証料です。具体的にシミュレーションすると:
| 項目 | 通常 | 敷金減額サービス利用 |
|---|---|---|
| 月額賃料 | 110万円(50坪) | 110万円(50坪) |
| 敷金(6ヶ月分) | 660万円 | 0円 |
| 年間保証料(5%) | — | 33万円/年 |
| 5年間の保証料合計 | — | 165万円 |
| 5年間の実質負担差 | — | 495万円の削減 |
敷金として固定化されていた660万円を、内装投資や採用、マーケティングなど成長に直結する分野に回せるため、キャッシュフローの改善効果は非常に大きくなります。
②セットアップ・居抜きオフィスを選ぶ
セットアップオフィス(内装付き物件)や居抜きオフィスは、通常のスケルトン物件と比べて敷金が低めに設定されているケースが多くあります。理由は、内装工事を入居者が行わないため原状回復の範囲が小さく、オーナーのリスクが低減されるからです。
敷金だけでなく、内装工事費(坪20〜35万円)や什器費(1人15〜30万円)も不要になるため、初期費用の総額を大幅に圧縮できます。
③敷金返還額を最大化する退去戦略
敷金を「預ける段階」だけでなく、「返してもらう段階」でもコスト削減が可能です。
- 原状回復の相見積もり:ビル指定業者の見積もりが相場の1.5〜2倍というケースは珍しくありません。専門業者のセカンドオピニオンを取ることで3割前後の削減が期待できます
- 退去の3〜6ヶ月前から準備:時間に余裕があれば、複数業者の比較検討や価格交渉が可能になります
- 入居時の状態を記録:写真・動画で入居時の状態を残しておくと、退去時の「どこまで原状回復が必要か」の判断基準になります
④賃料と立地のバランスで敷金総額を最適化
敷金は賃料に連動するため、賃料を抑えれば敷金も自動的に下がります。ただし、単純に安い物件を選ぶのではなく、業務効率や採用への影響を総合的に判断することが重要です。
たとえば、駅直結の坪25,000円の物件と、徒歩10分の坪18,000円の物件では、30坪の場合で月額賃料に21万円の差があり、敷金6ヶ月で126万円の差になります。しかし、通勤時間の増加による従業員の負担増や、来客時のアクセスの悪さなどのデメリットも考慮する必要があります。
オフィス敷金のよくある質問
Q. 敷金は経費になる?
敷金は退去時に返還される前提の「預け金」であるため、支払い時点では経費にはなりません。勘定科目は「差入保証金」として資産計上します。ただし、償却分(返還されないことが確定している部分)は「長期前払費用」として計上し、契約期間にわたって均等に費用化することができます。
Q. 敷金の返還時期は?
契約書に「退去後○ヶ月以内」と記載されているのが一般的で、実務上は退去後1〜3ヶ月程度で返還されるケースが多くなっています。ただし、原状回復工事の完了と精算が終わるまで返還されないため、工事が長引くと返還時期も遅れます。
Q. 個人事業主でもオフィスの敷金は必要?
はい、個人事業主であってもオフィスを借りる場合は敷金が必要です。ただし、シェアオフィスやコワーキングスペースであれば敷金不要のケースも多く、小規模であればレンタルオフィスという選択肢もあります。事業用の通常オフィスでも、敷金減額サービスを利用すれば負担を大幅に軽減できます。
Q. 敷金0円のデメリットは?
敷金0円の場合、保証会社への年間保証料(削減額の5%程度)が発生します。ただし、前述のシミュレーションの通り、5年間の保証料合計は敷金額を大幅に下回るため、トータルコストでは有利です。また、保証会社が間に入ることで、オーナーとの信頼関係構築がスムーズになるというメリットもあります。
まとめ
オフィスの敷金は賃料の3〜12ヶ月分が相場であり、50坪のオフィスで660万円、100坪で1,320万円以上になることも珍しくありません。退去時の返還率は40〜60%程度が一般的で、原状回復費用が膨らむとさらに低下します。
2026年現在の市場環境では、空室率の低下により敷金交渉が困難になる一方で、敷金0円・敷金減額サービスを活用した物件は着実に増えています。敷金として固定化される数百万円を成長投資に回せるかどうかは、特にスタートアップや成長フェーズの企業にとって大きな差になります。
Growth Officeでは、敷金0円物件を333件以上ご用意しています。オフィスの敷金についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。