MEDIAメディア
コラム

賃貸ラボ(レンタルラボ)とは?オフィスとの違い、借りる前に確かめる設備と費用、2026年の新設の動き

Growth Office編集部
賃貸ラボ(レンタルラボ)とは?オフィスとの違い、借りる前に確かめる設備と費用、2026年の新設の動き

「賃貸ラボ」「レンタルラボ」は、実験ができる設備を備えた、借りられる研究スペースのことです。見た目はオフィスビルに近いものの、排気・給排水・電気・床の強さが、薬品や細胞を扱う実験に耐えられるように作られています。

日本の研究施設は、長く企業が郊外に自前で持つものが中心でした。ところがここ数年、大学発のスタートアップの増加や、大企業が研究拠点を柔軟に組み替えたいという需要を受けて、不動産会社が都心の近くに賃貸ラボを次々と開発しています。2026年7月には三井不動産の「三井リンクラボ東陽町1」が竣工し、東京建物も初めての賃貸ラボを大阪府箕面市で建てています。

この記事では、賃貸ラボとは何か、オフィスとどこが違うのかを整理したうえで、ウェットラボとドライラボの違い、借りる前に確かめること、費用の内訳、2026年の新設の動き、候補の探し方までを順に解説します。

賃貸ラボとは

オフィスとラボが一体になった賃貸施設

日本政策投資銀行(DBJ)は2024年2月のレポートで、賃貸ラボを「オフィス機能とラボ機能(実験施設)が一体になった賃貸施設」と整理しています。実験施設の多くは、生化学の実験や細胞の培養を行う「ウェットラボ」で、一般的な賃貸ラボはバイオセーフティレベル2(BSL2)に対応しているとしています。

呼び方はいくつかあります。不動産業界や金融機関のレポートでは「賃貸ラボ」、検索では「レンタルラボ」がよく使われ、三井不動産は「ラボ&オフィス」、日鉄興和不動産は「賃貸型R&D施設」という言い方をしています。指しているものはほぼ同じです。

借り方は大きく5つ

形中身向いている会社
専有ラボ(区画貸し)区画を丸ごと借り、
自社で内装や設備を入れる
研究員が数名以上いる会社
シェアラボ共用の実験室の実験台を
1席単位で借りる
創業直後の会社、
数名のチーム
インキュベーション施設公的機関や大学が安く貸す。
審査と入居期限がある
創業期の会社
リサーチパークオフィス・ラボ・会議施設を
集めた大きな敷地
幅広い
事業会社が
開放した研究所
製薬会社などの研究所を
外部に開放したもの
大企業との協業を
狙う会社

創業直後はシェアラボやインキュベーション施設の小さな区画から始め、資金調達が進むと専有ラボに移る、という順に引っ越していく会社が多くあります。

オフィスとどこが違うのか

天井裏と床、電気と空気の流れが違う

賃貸ラボの募集資料には、オフィスではあまり見かけない数字が並びます。違いが大きいのは次の点です。

項目オフィス賃貸ラボ
階高・天井高天井裏は照明と空調だけ配管を通すため高くとる
(三井リンクラボは階高4,500mm前後)
床荷重事務室の法令の値は
約300kg/㎡(2,900N/㎡)
基準階500kg/㎡の例が多い
1階を1,000kg/㎡以上にする例も
電気照明とパソコンが中心単相と三相を分けて示す
非常用発電を備える例が多い
空調・換気室内の空気を循環させる薬品や微生物を含む空気を戻せず
排気が多く、外気を大量に取り込む
給排水トイレと給湯室区画ごとの実験流し
実験排水の別系統と中和処理
法規制建築と消防の基本が中心消防法の危険物、カルタヘナ法
排水、労働安全衛生法など
原状回復内装の撤去が中心設備の撤去に加えて
汚染がないことの確認

重い機器が多いのもラボの特徴です。-80℃のフリーザーや大型の遠心機、液体窒素のタンク、ガスのボンベは重く、床の強さが足りない場所には置けません。下の図は、各施設の公式ページに載っている床荷重を並べたものです。

賃貸ラボの床荷重の例。三井リンクラボ東陽町1は1階2,200kg/㎡・基準階500kg/㎡、三井リンクラボ新木場1は2階1,000kg/㎡・3〜6階500kg/㎡、01-LabFactory川崎西口は500kg/㎡。建築基準法施行令の事務室の値は約300kg/㎡

スペックの実例

同じ「ラボ」でも、物件によって仕様はかなり違います。公式ページで公表されている数字の例です。

施設階高床荷重電気容量対応
三井リンクラボ
東陽町1
1階5,500mm
基準階4,500mm
1階2,200kg/㎡
基準階500kg/㎡
非常用発電機を
設置可能
BSL2
対応可能
三井リンクラボ
新木場1
4,500mm2階1,000kg/㎡
3〜6階500kg/㎡
単相200VA/㎡
三相100VA/㎡
非常用発電あり
全区画
BSL2対応
01-LabFactory
川崎西口
3.8m500kg/㎡単相100VA/㎡
三相50VA/㎡
BSL2/P2
対応
東京建物
(箕面・建設中)
——300VA/㎡BSL2対応

「—」は公表資料に記載がないものです。01-LabFactoryは日鉄興和不動産、東京建物は(仮称)箕面船場東一丁目賃貸ラボプロジェクトです。BSL(バイオセーフティレベル)は病原体を扱う実験室の封じ込めの段階、P2は遺伝子組換え実験の拡散防止措置の段階を表します。どちらも「実験室の外にどれだけ出さないか」の物差しで、賃貸ラボの資料では「BSL2/P2対応」と並べて書かれることがよくあります。

ウェットラボとドライラボ

賃貸ラボは、中で何をするかによって大きく2つに分かれます。

項目ウェットラボドライラボ
中でやること細胞の培養、化学合成
微生物、試料の分析
電子機器の試作、計測
シミュレーション、解析
建物に要るもの給排水と実験排水、強い排気
ガス、床荷重、24時間の空調
電気容量、防振
床荷重(機械による)
法規制多い(消防法の危険物
カルタヘナ法、排水など)
少ない
(扱う物による)
オフィスからの転用難しい
設備を後から足すと高い
比較的しやすい

全国の賃貸ラボを集めた検索サイト「賃貸Labo検索.com」の掲載196施設(2026年9月集計)では、ウェットに対応するのが185施設、ドライに対応するのが135施設でした。BSL2対応を明記しているのは44施設、細胞培養加工施設(CPC)に対応するのは11施設、動物実験ができるのは13施設です。CPCや動物実験ができる賃貸ラボは、国内ではまだかなり少ないのが実情です。

借りる前に確かめる10のこと

ラボの内見では、広さより先に設備を確かめます。足りないと研究そのものができないからです。

  1. 区画に排気用のダクトスペースはあるか。ドラフトチャンバーは何台まで置けるか(排気型か循環型か)
  2. BSL2・P2の実験ができるか。ビルの規約で禁止されている実験はあるか
  3. 実験流しと実験排水の配管は区画まで来ているか。中和処理はどこでするか
  4. 床荷重は何kg/㎡か。重い機器を置く場所だけ補強できるか
  5. 電気容量と三相電源の有無。非常用発電につなげられる量
  6. 夜間・土日の空調と入館ができるか
  7. 溶剤などの危険物をどれだけ置けるか。区画ごとの上限はあるか
  8. ボンベや液体窒素の置き場と、大型機器の搬入経路
  9. 退去時の原状回復の範囲と、汚染がないことをどう確かめるか
  10. 契約は定期借家か普通借家か。期間と再契約の考え方

ドラフトチャンバーの台数は、区画に来ている排気ダクトと屋上のファンの能力で上限が決まり、後から増やすのが最も難しい設備です。機器名・台数・消費電力・重さ・大きさをまとめた「機器リスト」を先に用意しておくと、貸主との話が早く進みます。

費用の内訳と相場

賃料より、入るときと出るときのお金が重い

ラボを借りるお金は、月々の賃料よりも、入居と退去のときにまとまって出ていくお金の方が重くなりがちです。

タイミング費目中身
入るとき敷金・保証金賃料の数か月分を預ける
施設によって0〜12か月分
入るとき入居工事費ドラフトチャンバー、実験流し
電気の増設、間仕切りなど
毎月賃料・共益費
と実費
電気(空調を含む)・水道・ガス
清掃、廃液の回収委託など
出るとき原状回復費設備の撤去、配管の閉止
除染、床の張り替えなど

賃料が見えるのは公的施設、民間はほぼ非公開

賃料は、運営する主体によって見え方がまったく違います。賃貸Labo検索.comの掲載196施設では、賃料の金額を公開している施設は93施設(47%)でした。公的な施設は7割が金額を出している一方、民間のデベロッパーが運営する36施設で公開しているのは1施設だけです。

運営主体別の賃料公開率。公的(独立行政法人・自治体)72%、第三セクター65%、公益財団法人52%、大学41%、民間(シェアラボ等)38%、民間デベロッパー3%

竣工年がわかる66施設のうち、2024年以降に竣工した20施設は17施設が民間のデベロッパーのもので、賃料を公開しているのは1施設だけでした。新しい物件ほど賃料が見えにくい構造です。理由は、入居する会社ごとに必要な設備が違い、その工事の費用を賃料で回収すること、借り手の多くがまだ赤字のスタートアップで、条件を個別に決めていることにあります。

金額がわかる区画で比べると、1㎡あたりの月額賃料の中央値は3,000円(421区画)でした。たとえば東京都立産業技術研究センターの製品開発支援ラボは62.68㎡で月166,150円(1㎡あたり約2,651円)です。運営主体によって立地が偏るため、地域の相場としては使えない点には注意してください。運営主体別の数字は、賃貸Labo検索.comの「賃貸ラボ賃料開示レポート」にまとまっています。

敷金は0〜12か月分と幅が大きい

敷金・保証金も施設によって大きく違います。東京都立産業技術研究センターのように敷金が要らない公的施設がある一方、中小企業基盤整備機構(中小機構)の施設は税抜賃料の3か月分、かながわサイエンスパークのKSP Biotech Labは12か月分相当としています。敷金について公式に記載があるのは196施設のうち51施設(26%)だけで、多くは問い合わせないとわかりません。

契約は、期間が来ると終わり更新のない「定期借家」が多く見られます。ラボは入居工事に大きなお金をかけるので、契約の期間が工事費を回収できる長さかどうかが重要です。

敷金半額くん(全国どのオフィスも敷金0円に?)

2026年の新設の動き

不動産会社の開発が続く

DBJは2024年2月時点で、賃貸ラボは全国に100施設程度、うち公的機関の運営が7割程度と整理していました。その後、民間の新規供給が一気に増えています。2025年以降の主な動きをまとめました。

2025年から2028年の主な賃貸ラボの開業・竣工予定。2025年11月 01-LabFactory川崎西口、2025年12月 三井リンクラボ横浜関内、2026年6月 三井リンクラボ柏の葉2、2026年7月 三井リンクラボ東陽町1、2027年1月 三井リンクラボ日本橋1、2027年12月 東京建物(仮称)箕面船場東一丁目賃貸ラボプロジェクト、2028年3月 ヒューリック川崎市南渡田の研究施設
  • 三井不動産:2026年7月31日に「三井リンクラボ東陽町1」(江東区新砂、延床面積約2万㎡)が竣工しました。シリーズで初めて工業専用地域に建てた施設で、化学系の会社の入居を見込んで危険物貯蔵所を4基置いています。同じ東陽町で「(仮称)三井リンクラボ東陽町2」の開発にも着手し、2027年1月には「三井リンクラボ日本橋1」が竣工する予定です。計画中を含めて国内11拠点、うち関東10拠点になります。
  • 東京建物:同社として初めての賃貸ラボ・オフィスを、大阪府箕面市で2026年2月に着工しました。大阪大学の吹田キャンパスに近い立地で、BSL2対応、1区画約20坪から約240坪までをそろえ、2027年12月下旬の竣工を予定しています。2号物件の用地も箕面市内で確保しています。
  • 日鉄興和不動産:賃貸型R&D施設「01-LabFactory」の1号、川崎西口を2025年11月に開業しました(最大15区画、72〜881㎡)。
  • ヒューリック:川崎市川崎区の南渡田で、研究施設を主体とする延床10万㎡超の開発を進めています(2028年3月竣工予定)。
  • BioLabs:米国発のシェア型ウェットラボの運営会社BioLabsが、アジアで初めての直営拠点「BioLabs Tokyo」を三井リンクラボ新木場2に設け、2026年5月に関係者向けに公開しました。

借り手のスタートアップも増えている

経済産業省の調査(2026年6月12日公表の速報)では、大学発ベンチャーは2025年10月末時点で6,220社と過去最高になり、技術分野ではバイオ・ヘルスケアが最も多くなっています。賃貸ラボの借り手の中心はこうした会社で、資金調達の段階ごとに必要な面積が変わるたびに移転していきます。

一方で、成長した会社の受け皿はまだ足りません。賃貸Labo検索.comの掲載区画のうち面積がわかる569区画では、面積の中央値は50㎡で、200㎡以上の区画は37区画(6%)しかありませんでした。なお、ラボの開発が先行した米国では、CBREの2026年の年央の市場見通しによると、ラボ・研究開発施設の空室率が過去最高の23.8%に達し、作りすぎの反動が出ています。

賃貸ラボの探し方

DBJは、賃貸ラボは仲介会社を通さない直接の契約が主流だと指摘しています。オフィスのように一つの検索サイトですべてが見つかるわけではないため、次のような窓口を組み合わせて探すのが現実的です。

  • 公的なインキュベーション施設:中小機構は全国29か所でオフィス・ラボ・工場を貸しています。DBJは中小機構の施設の賃料を「民間水準の半額程度」としています。神戸市のように、賃料を3年間・年200万円まで補助する自治体もあります
  • デベロッパーの公式サイト:三井リンクラボなど、民間の物件は各社の公式ページで募集しています。賃料は問い合わせが前提です
  • 全国のラボをまとめて探せるサイト:京都リサーチパークの「RENTAL LAB PLUS」や、公的施設から民間の物件までエリア・用途で絞り込める「賃貸Labo検索.com」があります

候補を比べるときは、賃料だけでなく、入居工事費・敷金・原状回復費まで含めた総額で見ることが大切です。研究員が増えたときに隣の区画へ広げられるか、契約期間が工事費を回収できる長さか、も確かめておきましょう。

よくある質問

賃貸ラボとレンタルラボは違うものですか?

同じものを指すことがほとんどです。不動産業界の資料では「賃貸ラボ」、検索や公的なインキュベーション施設の名前では「レンタルラボ」がよく使われます。実験台を1席単位で借りる形は「シェアラボ」と呼ばれます。

普通のオフィスで実験はできますか?

パソコンや計測機器が中心のドライラボに近い使い方なら、オフィスでできることもあります。薬品や細胞を扱うウェットラボは、排気・実験排水・床荷重・危険物の量の上限などが必要で、オフィスビルの規約で認められないことが多くあります。後から設備を足すと費用もかさむため、最初から賃貸ラボを探すのが現実的です。

賃貸ラボの賃料の相場はどのくらいですか?

金額が公開されている区画では、1㎡あたり月3,000円前後が中央値です(賃貸Labo検索.comの掲載421区画)。ただし公開しているのは公的な施設が中心で、民間のデベロッパーの物件はほとんどが非公開です。

敷金はどのくらい必要ですか?

施設によって0〜12か月分まで幅があります。中小機構の施設は税抜賃料の3か月分、KSP Biotech Labは12か月分相当です。民間の物件は個別に決まることが多く、資金調達の状況や事業計画を見て条件が決まります。

まとめ

賃貸ラボは、オフィスと実験施設が一体になった賃貸施設です。オフィスとの違いは、天井裏の高さ、床の強さ、電気と排気、実験排水、法規制、そして退去時の汚染の確認にあります。

2026年は三井リンクラボ東陽町1の竣工や東京建物の参入など、民間の供給が広がっています。一方で、新しい民間の物件ほど賃料が公開されず、200㎡を超える大きな区画はまだ少ないのが現状です。設備の条件と、敷金・工事費・原状回復費まで含めた総額で候補を比べ、早めに動くことが大切です。

研究拠点とオフィスの移転を考えている方へ
Growth Officeでは、本社オフィスの移転や、ラボと別に構えるオフィスのご相談を承っています。ご希望のエリア・広さ・入居時期をお知らせください。ご相談は無料です。
東京のオフィスを探す → | お問い合わせはこちら →

出典:日本政策投資銀行「賃貸ラボの現状と展望」(2024年2月)、三井不動産「三井不動産のラボ&オフィス拠点が計画中物件を含め関東エリアで10拠点体制へ」(2026年7月31日)、東京建物「東京建物初となる賃貸ラボ・オフィス、大阪府箕面市で着工」(2026年2月9日)、経済産業省「令和7年度大学発ベンチャー実態等調査」(速報、2026年6月12日)、各施設の公式ページ、建築基準法施行令第85条、CBRE「U.S. Real Estate Market Outlook Midyear Review 2026 - Life Sciences」、賃貸Labo検索.com掲載データ(2026年9月集計)。

東京都 4,618 区画が募集中

理想のオフィス、そろそろ探しませんか?

敷金0円・セットアップ・即入居可の物件まで。ご希望の条件を伝えるだけで、Growth Officeが最適なオフィスをご提案します。ご相談は無料です。

敷金半額くん(全国どのオフィスも敷金0円に?)