オフィスの募集図面や物件情報には、「OAフロア」と書かれていることがよくあります。床の下に配線を通せる二重の床のことで、電源やLANのケーブルを床の上に出さずに済むため、机の配置の自由度や見た目、安全に関わります。
この記事では、OAフロアとは何か、主な種類、高さと耐荷重の見方、配線やレイアウト変更との関係、オフィスを借りる前と入居の工事で確かめておきたいことを、JIS(日本産業規格)や業界団体、国の基準の資料をもとにまとめます。
OAフロアとは
OAフロアは、床の上にもう1枚床を組み、そのすき間に配線を通せるようにした床です。JIS A 1450 は、このような床を「フリーアクセスフロア」と呼び、建築の二重床のうち、床の上面のパネルなどを簡単に取り外して、床下の設備などの保守ができる構造のものと定義しています。
一般社団法人フリーアクセスフロア工業会は、フリーアクセスフロアを容易に着脱できる床の総称とし、そのうち一般の事務室用のものを「OAフロア」と呼ぶとしています。床下に電源や各種ケーブル、空調の設備を収められ、床の上にケーブルを出さずに済むのが特徴で、「二重床」とも呼ばれます。同工業会の資料では、フリーアクセスフロアの市場の約9割を、事務所などの一般の居室向けが占めています。
GOの物件情報でも、床の仕様が書かれている東京の空室1,253区画のうち、1,240区画がOAフロアと書かれていました(2026年9月29日時点)。床の仕様が書かれていない区画も多いため、これは全体の割合ではありませんが、OAフロアは物件を比べるときに目にすることの多い項目です。
OAフロアの主な種類
支柱調整式と置敷式
フリーアクセスフロア工業会は、構造によって2つに分けています。「支柱調整式」は、パネルを支える支柱の高さを調整して、床の水平やがたつきを整えられるものです。「置敷式」は支柱の調整機能がなく、仕上がった床の面が、下の床の面にならうものです。支柱の付き方でも、パネルを持ち上げると支柱が床に残る「支柱分離型」と、支柱がパネル側に付いている「支柱一体型」に分かれます。
一般社団法人公共建築協会の評価基準は、構法を「置敷式溝構法」「置敷式パネル構法」「支柱調整式パネル構法」の3つに分けています。
用途による違い
フリーアクセスフロア工業会は、用途によって「OA室用」「電算室用」「クリーンルーム用」などに分け、電算室用には一般に高さ300ミリ程度以上の高い床が使われるとしています。一般の事務室のOAフロアのパネルは、主にスチール系で、窯業系やパーティクルボードなども使われます。
高さの見方
JIS A 1450 でいう「床高さ」は、仕上げ材まで施工した状態で、下の床の面から仕上げ材の上面までの高さです。この高さが高いほど、床下に多くの配線を通せます。
国の公共建築工事標準仕様書は、フリーアクセスフロアの高さや荷重を工事ごとの特記事項で決めるとしていて、標準の高さの数字は定めていません。参考になる数字として、公共建築協会が評価した製品(所定荷重3,000Nのもの、2026年4月版の名簿)の設定高さは、置敷式溝構法で29〜50ミリ、置敷式パネル構法で40〜93ミリ、支柱調整式パネル構法で40〜600ミリでした。これは評価を受けた製品の範囲で、市場全体の範囲ではありません。国の庁舎の予算の単価では、事務室は高さ100ミリ程度のフリーアクセスフロアを前提にしています。
高さで変わること
高さが低い床は、通せるケーブルの量が限られます。評価名簿の置敷式パネル構法では、床下の配線に使える高さが27〜74ミリでした。机の数が多い、LANや電源の線が多い会社は、床下に余裕があるかを確かめます。
OAフロアの分だけ床が上がるので、床から天井までの高さは低くなります。また、共用の廊下などとの間に段差ができる場合は、入口にスロープを設けることがあります。
耐荷重の見方
「N(ニュートン)」と「N/平方メートル」は別のもの
ビルの床の強さは「3,000N/平方メートル」のように、面全体に均等にかかる荷重(等分布荷重)で表されます。これに対してOAフロアの強さは、パネルの1点にかかる荷重(集中荷重)で「3,000N」のように表します。フリーアクセスフロア工業会は、OAフロアは多くの場合、荷重を隣のパネルに伝えない構造なので、ビルの床の数字とOAフロアの数字は関係しないと説明しています。
なお、建築基準法施行令85条は、事務室の床の構造計算に使う積載荷重を1平方メートルあたり2,900Nとしています(大ばり・柱・基礎の計算では1,800N、地震力の計算では800N)。
所定荷重と、長く置いておける重さ
JIS A 1450 の試験では、直径50ミリの鋼の円柱でパネルのいちばん弱いところに「所定荷重」をかけて、変形の大きさを確かめます。直径50ミリは、事務所の家具の脚が床に接する面積を考えて決められたものです。フリーアクセスフロア工業会は、所定荷重を短い間なら耐えられる荷重、「許容積載荷重」を長く載せておける荷重として分け、許容積載荷重は所定荷重の1.5分の1程度にするよう勧めています。
| 所定 荷重 | 許容積載 荷重 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 2,000N | 1,300N | 一般事務室 (軽い 機器) |
| 3,000N | 2,000N | 一般事務室 (一般の 機器) |
| 4,000N | 2,600N | 重い機器や 書庫の場所 |
| 5,000N | 3,300N | 機械室・ 電算機室 |
出典:一般社団法人フリーアクセスフロア工業会「フリーアクセスフロアの性能評価」(2022年)
重いものを置くとき
家具は、がたつきを抑える調整ねじの脚で床に載るので、パネルには1点ずつ荷重がかかります。家具を並べると、1枚のパネルに複数の脚が載ることもあります。金庫や移動棚のような重いものは許容積載荷重の範囲に収め、超える場合は架台や補強で荷重を分散させます。補強の方法や地震への備えはメーカーによって違うため、フリーアクセスフロア工業会はメーカーに確かめるよう案内しています。

配線とレイアウト変更
フリーアクセスフロア工業会は、OAフロアの特徴として、床下に配線の空間が取れること、レイアウトの変更がしやすいこと、床下の点検がしやすいことなどを挙げています。机の位置を変えても、近くのパネルを開けて配線を引き直せるため、床の上にケーブルを這わせる必要がありません。
国の標準仕様書(電気設備工事編)は、二重床の中の電力ケーブルを床下に敷く配線とし、LANなどの通信の線と直接触れないように仕切ることなどを定めています。床下の配線は、あとから見て分かるように整理しておくと、次のレイアウト変更や退去のときに手間が減ります。
OAフロアがない区画では、床の上を配線が通るため、コンセントの位置で机の配置が決まりやすくなります。レイアウトの考え方はオフィスレイアウトの決め方で扱っています。
オフィスを借りる前に確かめること
OAフロアの有無と高さ
物件情報や募集図面にOAフロアと書かれていても、高さまでは書かれていないことがあります。内見のときに、床の高さ、床下の空きの具合、すでにある配線の状態を確かめます。
コンセントと床下の配線
床のどこから電源を取れるか、前のテナントの配線が残っているかを確かめます。残っている配線を使えるのか、撤去してから入居するのかは、貸主と取り決めておきます。
重いものを置く予定があるか
金庫や書庫、サーバーラックのような重いものを置く予定があるなら、OAフロアの所定荷重を管理会社に確かめ、置く場所と補強の方法を入居前に決めておきます。
OAフロアを新しく設けるとき
スケルトンの区画などでOAフロアを新しく設ける場合は、その工事をビル側と自社のどちらが手配し、費用を持つのかを確かめます(A工事・B工事・C工事の違い)。民法は、借りた人が借りた後に付けた物を、契約が終わったときに取り外す義務を負うとしています(622条で準用する599条)。自社で設けたOAフロアを退去のときに撤去するのかどうかは、契約で確かめておきます。原状回復の費用の考え方はオフィスの原状回復費用の相場で扱っています。
OAフロアの区画を探すなら、東京の賃貸オフィス一覧から物件ごとの設備を比べられます。
よくある質問
Q. OAフロアとフリーアクセスフロアは同じものですか?
フリーアクセスフロアは、パネルを簡単に取り外して床下の設備を保守できる二重床の総称です。フリーアクセスフロア工業会は、そのうち一般の事務室用のものを「OAフロア」と呼ぶとしています。
Q. OAフロアの高さは、どのくらいが一般的ですか?
国の標準仕様書に標準の高さの定めはありません。公共建築協会が評価した製品では、置敷式溝構法で29〜50ミリ、置敷式パネル構法で40〜93ミリ、支柱調整式パネル構法で40〜600ミリでした。国の庁舎の予算の単価は、事務室に高さ100ミリ程度を前提にしています。
Q. OAフロアの耐荷重はどう見ればよいですか?
OAフロアの強さは、パネル1点にかかる荷重(N)で表します。一般の事務室では所定荷重2,000Nや3,000Nが使われ、長く置いておける重さ(許容積載荷重)はその1.5分の1程度が目安です。ビルの床の「N/平方メートル」の数字とは別のものです。
Q. 重い金庫を置いても大丈夫ですか?
許容積載荷重の範囲に収まるかを確かめ、超える場合は架台や補強で荷重を分散させます。補強の方法はメーカーによって違うので、ビルの管理会社を通じてメーカーに確かめてください。
Q. 退去のときにOAフロアは撤去しますか?
民法は、借りた人が借りた後に付けた物を、契約が終わったときに取り外す義務を負うとしています(622条で準用する599条)。ビルにもともと設けられていたOAフロアは、借りた後に自社で付けた物ではないので、この対象ではありません。自社で設けた場合は、撤去が必要かどうかを契約で確かめておきます。
まとめ
OAフロアは、床の下に配線を通せる二重床で、机の配置の自由度やレイアウト変更のしやすさに関わります。構造によって置敷式と支柱調整式があり、高さは製品によって数十ミリから数百ミリまであります。強さはパネル1点にかかる荷重(N)で表し、ビルの床の強さの数字とは別のものです。
オフィスを借りる前には、OAフロアの有無と高さ、床下の配線の状態、コンセントの位置を確かめ、重いものを置く予定があれば耐荷重と補強の方法まで決めておきます。自社でOAフロアを設ける場合は、工事の区分と退去のときの扱いを、契約の段階で確かめておくと安心です。