オフィスに入居するときや、入居に合わせて内装の工事をするときは、消防署への届出が要ることがあります。東京消防庁の管内(東京都のうち、稲城市と島しょ地区を除く区域)では、建物やその一部を使い始める人は、使い始める日の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を出さなければなりません。
この記事では、東京消防庁の管内でオフィスに入居する会社が出す届出を中心に、防火対象物使用開始届と防火対象物工事等計画届の期限と出す人、消防用の設備の工事が伴うときの届出、防火管理者が要る場合、入居までのスケジュールの組み方をまとめます。条文は、東京都の火災予防条例(2026年7月15日現在の例規集)と消防法令によります。
入居と内装工事で出す届出の一覧
入居と工事の内容によって、出す届出が変わります。主なものは次のとおりです。
| 届出 | 期限と出す人 |
|---|---|
| 使用 開始届 | 使い始める日の7日前 入居して使う会社 |
| 工事等 計画届 | 工事に着手する日の7日前 工事を依頼した人 |
| 着工届 | 設備の工事の10日前 工事をする 甲種消防設備士 |
| 設置届 | 工事が終わって から4日以内 設備を設置した関係者 |
正式な名前は、防火対象物使用開始届出書、防火対象物工事等計画届出書、工事整備対象設備等着工届出書、消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書です。
このうち、入居する会社が必ず確かめたいのが、防火対象物使用開始届と防火対象物工事等計画届です。消防用の設備の工事が伴う場合は、着工届と設置届も要ります。それぞれの中身を順に見ていきます。
防火対象物使用開始届(使い始める日の7日前まで)
火災予防条例56条の2第1項は、建物やその一部を使おうとする人に、使い始める日の7日前までに、その旨を消防署長に届け出るよう定めています。事務所も対象です。
出すのは、入居して使う会社
東京消防庁は、届出者は実際に使おうとする人(入居する人、テナントで営業する人)で、工事をする建築工事業者や消防設備業者、内装工事業者ではないと案内しています。書類づくりを内装会社などに手伝ってもらう場合も、届出者欄には入居する会社の名前が入ります。
必要になる場面
東京消防庁は、届出が必要な具体例として、建物の建築後、間取りや天井高さを変える改装工事の後、テナントの入れ替えの後を挙げています。内装工事をせずに、前のテナントの内装や家具をそのまま使って入居する場合も、テナントが入れ替わる以上、使用開始届が要ります。内装と家具があらかじめ用意されたセットアップオフィスに入居する場合も同じです。
添える書類と、使い始める前の検査
届出書には、防火対象物の概要表のほか、案内図、平面図、詳細図、立面図、断面図、展開図、室内仕上表、建具表などを添えます(東京消防庁の案内)。様式と記入例は、2023年10月13日の規則の改正で変わっています。
一定の規模や用途の建物(指定防火対象物等)を使い始めるときは、使用開始の前に消防署の検査を受けなければなりません(56条の2第3項)。東京消防庁は、届出の内容によって検査を省略する場合があるとしたうえで、届出のときに検査の日程を窓口で相談するよう案内しています。電子申請や郵送で出した場合も、管轄の消防署に連絡して日程を相談します。
出さずに使った場合
使用開始届を出さずに建物を使った人は、10万円以下の罰金の対象になります(火災予防条例67条の2第4号)。従業員が会社の業務として違反した場合は、本人のほか会社にも罰金が科されます(68条)。
防火対象物工事等計画届(工事に着手する日の7日前まで)
火災予防条例56条1項は、一定の建物(指定防火対象物等)の修繕、模様替え、間取りや天井高さの変更などの工事をしようとする人に、工事に着手する日の7日前までに、その旨を消防署長に届け出るよう定めています。建築基準法の確認を受ける工事は、この届出の対象外です。
出すのは、工事を依頼した人
東京消防庁は、届出者は工事業者などに工事を依頼した人だと案内しています。入居する会社が内装会社に工事を頼むなら、届出者はその会社です。具体例として、間取りや天井高さを変える改装、テナントの入れ替えに伴う工事が挙げられています。
届出書には、防火対象物の概要表、平面図、立面図、断面図、室内仕上表、建具表などを添えます。消防署長は、避難に必要な施設や防火戸の管理、防炎、消防用の設備の設置などの基準に合っているかを審査します(56条3項)。
対象になる建物
対象の「指定防火対象物等」は、消防法施行令10条1項(消火器具を設ける建物)などに当たる建物とその部分です。事務所の場合、延べ面積300平方メートル以上の建物や、地階・窓のない階・3階以上の階で床面積50平方メートル以上の階がある建物がこれに当たると読めます。借りる区画が当たるかどうかは、ビルの管理会社か管轄の消防署に確かめてください。
なお、ビルの所有者には、工事をしようとする人に届出を適正に行うよう求める努力義務があります(56条4項)。入居の工事の段取りを決めるときに、ビル側から届出について案内されることもあります。
消防用の設備の工事が伴うとき
間仕切りで会議室や個室をつくると、火災報知器の感知器やスプリンクラーのヘッドを足したり、位置を変えたりする工事が必要になることがあります。その場合は、次の届出も要ります。間仕切りと消防用の設備の関係はパーテーション工事で確かめることで扱っています。
着工届(着手の10日前まで)
自動火災報知設備やスプリンクラー設備など、消防設備士でなければできない工事をするときは、工事を担当する甲種消防設備士が、着手する日の10日前までに消防署に届け出ます(消防法17条の14)。東京消防庁は、この届出を出すのは甲種消防設備士で、建物の所有者やテナントではないと案内しています。工事が軽いものなら、着工届を省けることがあります。
設置届と検査(工事が終わってから4日以内)
消防用の設備を設置した関係者は、工事が終わった日から4日以内に消防署に届け出て、検査を受けます(消防法17条の3の2、消防法施行規則31条の3)。東京消防庁は、関係者は建物の所有者の場合もテナントの場合もあり、状況によって変わるとしています。もとからある設備を改修した場合や、改装工事の後、テナントの入れ替えの後にも必要とされています。着工届を省いた場合でも、設置届は省けません。消防法の設置届の対象は、事務所の場合、延べ面積300平方メートル以上で消防署長などが指定した建物に限られますが、東京消防庁の管内では、それ以外の指定防火対象物等でも、火災予防条例58条の3により、同じく4日以内の届出と使用開始前の検査が求められます。
誘導灯や非常警報設備など、着工届の対象にならない設備を設ける場合は、東京消防庁の管内では、工事に着手する日の10日前までに設置計画届を出します(火災予防条例58条の2)。
消防法では、着工届や設置届、次に説明する防火管理者の選任届を怠った人は、30万円以下の罰金または拘留の対象になります(消防法44条)。
防火管理者が要るかどうか
一定の人数が出入りする建物では、管理について権原のある人(テナントの場合は入居する会社)が防火管理者を定め、消防計画の作成や訓練などをさせなければなりません(消防法8条)。
事務所だけのビルなら、建物全体で50人以上
事務所のような用途だけの建物では、建物全体の収容人員が50人以上になると、防火管理者が必要です(消防法施行令1条の2)。東京消防庁は、この場合、建物の所有者とすべてのテナントが防火管理者を選ぶ必要があると案内しています。自社の人数が50人に満たなくても、ビル全体で50人以上なら選任が要るということです。飲食店や店舗が入っているビルでは、基準の人数が30人以上になります。
事務所の収容人員は、従業者の数に、主に従業者以外の人が使う部分の床面積を3平方メートルで割った数を足して出します(消防法施行規則1条の3)。
資格と届出
防火管理者には甲種と乙種があり、講習を修了すると資格が得られます。講習は、甲種が2日間、乙種が1日です。事務所のような用途の建物は、延べ面積が500平方メートル未満なら乙種でもよく、それ以上の建物でも、テナントの部分の収容人員が50人未満なら、そのテナントの防火管理者は乙種でもかまいません(消防法施行令3条)。防火管理者を定めたときは、遅滞なく消防署に届け出ます。
高さ31メートルを超える建物などで、所有者やテナントが分かれているときは、全体をまとめる統括防火管理者を協議して定め、建物全体の消防計画をつくります(消防法8条の2)。入居するビルがこれに当たる場合は、ビル側から協議や訓練への参加を求められます。

届出の出し方と、入居までのスケジュール
電子申請、窓口、郵送で出せる
東京消防庁の使用開始届、工事等計画届、設置届、着工届、防火管理者の選任届は、電子申請、窓口、郵送のどれでも出せます。提出先は、建物を管轄する消防署(予防課)です。電子申請は、2025年2月28日から新しいサービスに切り替わっています。
入居日から逆算して段取りを決める
内装工事をしてから入居する場合は、入居の日から逆算して、工事の着手の7日前(消防用の設備の工事があれば10日前)までに工事の届出、入居の7日前までに使用開始届を出せるように、書類をそろえておきます。設備の工事が終わったら4日以内に設置届を出し、検査の日程も早めに相談します。
図面や仕上表など、内装会社やビルの管理会社が持っている書類が多いので、誰がどの書類を用意し、誰の名前で出すのかを、工事の契約の段階で決めておくと慌てずに済みます。入居の工事と費用の考え方はオフィス内装工事の費用相場とA工事・B工事・C工事の違いで扱っています。
東京以外の地域では
東京以外でも、同じような決まりを置いている市があります。大阪市は、店舗や事務所などを使い始めるときに、使用を開始する日の7日前までに「防火対象物使用開始(変更)届出書」を出すよう案内しています。横浜市の火災予防条例も、使い始める日の7日前までの届出を定めています。届出の名前や、内装工事の前に出す届出の有無は地域によって違うため、入居する建物を管轄する消防署に確かめてください。
よくある質問
Q. 防火対象物使用開始届は、誰が出しますか?
入居して実際に使う会社です。東京消防庁は、工事をする建築工事業者や消防設備業者、内装工事業者は届出者ではないと案内しています。
Q. 内装工事をしないセットアップオフィスに入る場合も、届出は要りますか?
使用開始届は要ります。東京消防庁は、テナントの入れ替えの後を、使用開始届が必要な場面として挙げています。工事をしないなら、工事等計画届は要りません。
Q. 届出はいつまでに出せばよいですか?
使用開始届は使い始める日の7日前まで、工事等計画届は工事に着手する日の7日前までです。消防用の設備の工事があるときは、甲種消防設備士が着手の10日前までに着工届を出し、工事が終わってから4日以内に設置届を出して検査を受けます。
Q. 使用開始届を出さないと、どうなりますか?
出さずに使った人は、10万円以下の罰金の対象になります(火災予防条例67条の2第4号)。従業員が会社の業務として違反した場合は、会社にも罰金が科されます(68条)。
Q. 防火管理者は、何人の会社から必要ですか?
自社の人数ではなく、建物全体の収容人員で決まります。事務所のような用途だけのビルでは、建物全体で50人以上になると、建物の所有者とすべてのテナントが防火管理者を選ぶ必要があります。飲食店や店舗が入っているビルでは30人以上です。
Q. 電子申請はできますか?
できます。東京消防庁の使用開始届や工事等計画届などは、電子申請、窓口、郵送のどれでも出せます。
まとめ
東京消防庁の管内でオフィスに入居する会社は、使い始める日の7日前までに防火対象物使用開始届を出します。出すのは入居する会社で、内装工事をしないセットアップオフィスへの入居でも必要です。入居に合わせて間取りを変えるような工事をするときは、工事に着手する日の7日前までに防火対象物工事等計画届を出し、消防用の設備の工事が伴うときは着工届と設置届、検査も要ります。
ビル全体の収容人員が50人以上(飲食店などが入るビルは30人以上)なら、防火管理者も選びます。入居日から逆算して、誰がどの書類を用意し、誰の名前で出すかを早めに決めておくと、入居の日程に間に合わせやすくなります。