オフィスの内装工事をするときに確かめておきたい決まりのひとつが、建築基準法の「内装制限」です。火事のときに燃え広がりにくく、煙や有害なガスが出にくい材料で壁と天井を仕上げるよう求めるもので、建物の規模や部屋の条件によっては、事務所も対象になります。
この記事では、内装制限の目的と対象になる部分、オフィスが対象になる3つの条件、使える材料の種類と見分け方、適用が除かれる場合、テナントとして内装工事をするときの確かめ方を、法令と国土交通省・東京都・東京消防庁の資料をもとにまとめます。
内装制限とは
建築基準法35条の2は、一定の建物や部屋について、壁と天井(天井がない場合は屋根)の室内に面する部分の仕上げを、防火上支障がないようにするよう求めています。国土交通省は、その目的を、出火の防止、初期火災の成長を遅らせること、有害な煙やガスの発生を少なくして避難の安全を確保すること、と説明しています。
対象は壁と天井で、床は対象外です。壁のうち床から1.2メートル以下の部分と、回り縁や窓台などは対象から除かれます(建築基準法施行令128条の5第1項)。ただし、1.2メートル以下を除く扱いは居室の壁についてのもので、廊下などの通路や、後で説明する窓のない居室、火を使う部屋には当てはまりません。
オフィスが対象になる3つの条件
内装制限は、劇場や病院、飲食店などの特殊建築物で厳しく定められていますが、事務所はこの特殊建築物の用途には入っていません(建築基準法別表第一、施行令115条の3)。オフィスが内装制限の対象になるのは、主に次の3つの場合です。
1. 建物の規模が大きい
階数が3以上で延べ面積が500平方メートルを超える建物、階数が2で延べ面積が1,000平方メートルを超える建物、階数が1で延べ面積が3,000平方メートルを超える建物は、用途にかかわらず内装制限の対象です(施行令128条の4第2項・第3項)。この場合、居室の壁と天井は難燃材料以上、居室から地上に通じる主な廊下や階段などの通路の壁と天井は準不燃材料以上で仕上げます(128条の5第4項)。
GOに掲載している東京の空室があるビルのうち、階数がわかる2,375棟では、99.7%が地上3階以上でした(2026年9月29日時点)。延べ面積が500平方メートルを超えていれば、この規模の条件に当たります。ただし、高さ31メートル以下の部分にある居室で、100平方メートル以内ごとに準耐火構造の床・壁と防火設備で区画されたものなどは、居室の制限から除かれます。
2. 窓のない居室がある
床面積が50平方メートルを超える居室で、開けられる窓などの面積の合計が床面積の50分の1に満たないものは、内装制限上の「窓その他の開口部を有しない居室」になります(施行令128条の3の2)。この居室と、そこから地上に通じる主な通路の壁と天井は、準不燃材料以上で仕上げます(128条の5第5項)。天井の高さが6メートルを超える居室は除かれます。
この判定は、2025年11月1日施行の改正で変わりました。天井の高さが2.6メートルを超える居室では、床から1.8メートル以上の部分にある窓も数えられるようになり、給気口と排気口を設けた場合は、必要な開放面積の割合を計算で下げられるようになりました(上限は50分の1)。
床面積が50平方メートルを超える会議室などを、間仕切りで窓に面しない位置につくると、その部屋がこの「窓のない居室」になることがあります。間仕切りの工事で確かめることはパーテーション工事で確かめることで扱っています。
3. 火を使う設備がある
調理室やボイラー室のように火を使う設備や器具を設けた部屋は、壁と天井を準不燃材料以上で仕上げます(128条の4第4項、128条の5第6項)。ただし、住宅以外の建物では、特定主要構造部を耐火構造とした建物にある部屋は、この条件から除かれます。東京消防庁の審査基準では、IH調理器(電磁誘導加熱式)は火を使う設備に当たらないとしています。
使える材料の種類
内装制限で使う材料は、火事の熱が加わったときに燃えずに耐えられる時間で3つに分かれます。不燃材料は加熱の開始から20分、準不燃材料は10分、難燃材料は5分です(建築基準法2条9号、施行令1条5号・6号、108条の2)。不燃材料は準不燃材料と難燃材料の条件も満たし、準不燃材料は難燃材料の条件も満たします。
| 種類 | 耐える 時間 | 石膏ボード の例 |
|---|---|---|
| 不燃材料 | 20分 | 厚さ 12mm以上 |
| 準不燃材料 | 10分 | 厚さ 9mm以上 |
| 難燃材料 | 5分 | 厚さ 7mm以上 |
出典:平成12年建設省告示第1400号・第1401号・第1402号(石膏ボードは、原紙の厚さの条件つき)
国土交通大臣の認定を受けた材料には、認定番号が付いています。国土交通省の資料では、番号の頭が不燃材料は「NM」、準不燃材料は「QM」、難燃材料は「RM」です。東京消防庁の審査基準では、壁紙などの防火壁装材料は下地との組み合わせで性能が決まり、施工後に貼る防火施工管理ラベルは、赤が不燃材料、緑が準不燃材料、青が難燃材料としています。
オフィスでよくある場面
窓に面しない会議室をつくる
床面積が50平方メートルを超える会議室を窓に面しない位置につくると、内装制限上の窓のない居室になり、その部屋と通路の壁と天井を準不燃材料以上で仕上げることになります。50平方メートル以下の会議室は、この条件には当たりませんが、建物の規模の条件に当たるビルなら、居室として難燃材料以上で仕上げます。
給湯室にコンロを置く
ガスコンロのように火を使う器具を置く部屋は、火を使う設備のある部屋として、壁と天井を準不燃材料以上で仕上げます。ただし、特定主要構造部を耐火構造とした建物にある部屋は除かれます。東京消防庁の審査基準では、IH調理器は火を使う設備に当たらないとしています。
壁や天井を木や壁紙で仕上げる
規模の条件に当たるビルの居室では、壁と天井を難燃材料以上で仕上げます。木材で仕上げたい場合も、天井を準不燃材料とし、壁を木材などとする組み合わせが国土交通大臣の告示で認められています(取り付け方の条件つき)。壁紙などは、下地との組み合わせで防火の性能が決まるので、内装会社に組み合わせの区分を確かめます。
照明のカバーや装飾を付ける
東京消防庁の審査基準では、壁や天井に付ける照明器具のカバーなどが、その面の表面積の10分の1を超える場合は内装制限の対象として扱い、装飾用の小さな角材などは対象外にできるとしています。
内装制限が除かれる場合
スプリンクラー設備などの自動式の消火設備を設け、天井を準不燃材料で仕上げた部分など、煙やガスが避難の妨げになる高さまで降りてこない部分として国土交通大臣が定めるものには、内装制限の規定が適用されません(施行令128条の5第7項、令和2年国土交通省告示第251号)。窓のない居室や火を使う部屋などには当てはまらない場合があります。避難安全検証法で安全が確かめられた階や建物でも、一部の規定が適用されなくなります。
どの除外が使えるかは、建物の構造や設備によって決まるので、設計者に確かめてください。

消防法の内装の決まりとの違い
内装については、消防法令にも別の決まりがあります。東京消防庁の審査基準は、消防法令上の内装の規制では、建築基準法のように床から1.2メートル以下を除く扱いはなく、床面から対象になるとしています。また、天井に届かない間仕切りでも、高さがおおむね2メートル以上のものや床に固定したものは、消防法令上は壁として扱うとしています。
テナントとして内装工事をするときの確かめ方
確認申請が要らない工事でも、決まりは守る
テナントの入居に伴う内装工事の多くは、建築確認の申請が要りません。国土交通省は、建物は存在する限り常に建築基準法に適合している必要があり、手続きが要らないからといって適合させなくてよいわけではない、と説明しています。東京都も、テナントの入居や店舗の改装のときは、規模や確認申請の要否にかかわらず建築基準法などに適合させる必要があるとし、違反の例に内装制限を挙げています。
工事の前に確かめること
東京都は、今の建物の状況を確認済証・検査済証・確認申請の図面などで確かめ、事前に建築士に相談するよう求めています。テナントとしては、ビル側から建物の階数と延べ面積、主要構造部の構造、スプリンクラーの有無を教えてもらい、内装会社に、使う材料の防火の区分(不燃・準不燃・難燃)を仕上表に書いてもらうと確かめやすくなります。
東京消防庁の管内では、間取りを変えるような工事の7日前までに防火対象物工事等計画届を出し、室内仕上表や建具表を添えます。詳しくは防火対象物使用開始届と、オフィスの入居・内装工事で消防に出す届出をご覧ください。建物の所有者・管理者・占有者には、建物を常に適法な状態に保つよう努める義務があります(建築基準法8条1項)。
内装に手を入れないという選択肢
内装と家具があらかじめ用意されたセットアップオフィスなら、入居のときに内装の工事をせずに済みます。内装工事の手間や、決まりの確認を減らしたい会社は、東京のセットアップオフィス一覧も比べてみてください。工事の費用の目安はオフィス内装工事の費用相場で扱っています。
よくある質問
Q. 事務所(オフィス)は内装制限の対象ですか?
事務所は特殊建築物の用途には入っていませんが、建物の規模(階数3以上で延べ面積500平方メートル超など)、窓のない居室、火を使う設備のある部屋のいずれかに当たると、対象になります。GOに掲載している東京のビルでは、ほとんどが地上3階以上なので、延べ面積が500平方メートルを超えていれば規模の条件に当たります。
Q. 床は内装制限の対象ですか?
対象外です。内装制限の対象は壁と天井です。
Q. 腰壁(床から1.2メートル以下)は対象ですか?
居室の壁のうち床から1.2メートル以下の部分は、建築基準法の内装制限の対象外です。廊下などの通路、窓のない居室、火を使う部屋にはこの除外はありません。消防法令上の内装の規制では、床面から対象になるとされています(東京消防庁の審査基準)。
Q. 石膏ボードは、どの材料に当たりますか?
告示では、原紙の厚さの条件のもとで、厚さ12ミリ以上が不燃材料、9ミリ以上が準不燃材料、7ミリ以上が難燃材料とされています。
Q. 確認申請が要らない内装工事でも、内装制限は守る必要がありますか?
あります。国土交通省と東京都は、確認申請が要らない工事でも建築基準法に適合させる必要があるとしています。工事の前に、建物の状況を図面などで確かめ、建築士に相談してください。
まとめ
内装制限は、火事のときに燃え広がりにくい材料で壁と天井を仕上げるよう求める建築基準法の決まりです。事務所は特殊建築物ではありませんが、建物の規模が大きい、窓のない居室がある、火を使う設備があるのいずれかに当たると対象になり、居室は難燃材料以上、通路や窓のない居室は準不燃材料以上で仕上げます。
テナントの内装工事は確認申請が要らないことが多い一方、決まりに適合させる必要はあります。ビル側から建物の規模と構造、スプリンクラーの有無を聞き、内装会社に材料の防火の区分を仕上表で示してもらい、東京消防庁の管内では工事等計画届も忘れずに出します。

