内装の工事をせずに入居できるオフィスには、大きく分けて「セットアップオフィス」と「居抜きオフィス」があります。どちらも内装がすでにある区画ですが、その内装を用意したのが貸主か前の借主かで、契約の相手、費用のかかり方、退去のときの扱いが変わります。
この記事では、セットアップオフィスと居抜きオフィスの違いを、内装を用意する人、契約、費用、退去のときの扱いに分けて整理し、GOに掲載している東京の空室のデータも交えて、それぞれに向いている会社と探し方をまとめます。
違いの一覧
| 比べる こと | セット アップ | 居抜き |
|---|---|---|
| 内装を 用意 する人 | 貸主 | 前の借主 |
| 契約の 相手 | 貸主 | 貸主と、 前の借主 |
| 内装の 費用 | 賃料などに 含まれる | 造作の代金 (交渉) |
| 内装の 中身 | 貸すために つくった | 前の借主が 自社用に つくった |
| 退去の とき | 貸主の内装 は残す | 引き継いだ 造作の扱い を決める |
セットアップオフィスとは
セットアップオフィスは、貸主があらかじめ内装を整えて貸すオフィスです。机や椅子、会議室の家具まで付いたものと、内装だけで家具は自分で用意するものがあります。貸主が次の借主に貸すためにつくった内装なので、会議室や執務スペースの配置は、その広さで働く会社を想定して組まれています。
GOに掲載している東京の空室4,533区画(2026年9月29日時点)のうち、内装がセットアップの区画は444区画でした。そのうち312区画は家具付きです。仕組みの詳しい説明はセットアップオフィスとは、家具付きと内装のみの違いはフルセットアップオフィスとハーフセットアップオフィスで扱っています。
居抜きオフィスとは
居抜きオフィスは、前の借主がつくった内装や設備を残したまま、次の借主に貸すオフィスです。前の借主が退去のときの原状回復の工事をせずに済み、次の借主は入居の工事を減らせるので、双方に利点があります。公益財団法人不動産流通推進センターの相談事例でも、事業用の物件では居抜きを条件とすることも広く見られるとされています。
残された内装や設備を次の借主が買い取る取引を造作譲渡といいます。その場合は、貸主との賃貸借契約とは別に、前の借主との間で造作の範囲や代金を取り決めます。詳しくは造作譲渡とは、居抜きオフィスの全体像は居抜きオフィスとはをご覧ください。
費用の違い
セットアップは、内装の費用が賃料などに含まれる
セットアップオフィスは、内装を用意する費用を貸主が持ち、借主は賃料などを払います。入居のときの内装工事の費用がかからない代わりに、賃料には内装の分が含まれていると考えるのが自然です。
GOに掲載している東京の10坪以上の空室で比べると、セットアップの区画は、敷金の月数の中央値が6か月(それ以外の区画は8か月)でした。賃料を公開している区画の坪単価の中央値は、セットアップが28,000円、それ以外が22,000円でした(2026年9月29日時点)。この比較には、立地や広さ、ビルの違いも混ざっているので、同じ条件の区画を比べたものではありません。
セットアップオフィスの賃料の相場はセットアップオフィスの賃料相場、入居のときの費用の見通しはセットアップオフィスの初期費用シミュレーションで扱っています。
居抜きは、造作の代金と、次の退去の費用を見込む
居抜きオフィスでは、前の借主に造作の代金を払う場合があります。代金は、造作の状態や、退去のときに撤去する必要があるかどうかで変わります。次に自社が退去するときに、引き継いだ造作まで撤去して元に戻す取り決めになれば、その費用も見込んでおく必要があります。
契約と退去のときの違い
セットアップは、貸主との契約だけで済む
セットアップオフィスの内装は貸主のものなので、契約の相手は貸主だけです。民法は、借りた人が借りた後に付けた物を、契約が終わったときに取り外す義務を負うとしていますが(622条で準用する599条)、貸主が用意した内装は、借りた後に自社で付けた物ではありません。ただし、借りている間に傷めた部分の扱いや、自社で追加した物の撤去は、契約で決まります。退去のときの注意点はセットアップオフィスの退去時の注意点で扱っています。
居抜きは、貸主と前の借主の両方と取り決める
居抜きオフィスでは、貸主との賃貸借契約に加えて、前の借主との造作譲渡の取り決めが要ります。前の借主が造作を残して退去することも、次に自社が退去するときの原状回復の範囲も、貸主との取り決めで決まります。日本ビルヂング協会連合会のオフィスビルの標準契約書の雛型では、借主が自分で付けた造作は撤去して入居したときの状態に戻すのが原則とされているので、居抜きで入るときは、どこまで戻すのかを書面で決めておきます。
入居から退去までにかかるお金の比べ方
月々の賃料だけで比べると、内装の費用がどこに入っているかが見えにくくなります。入居から退去までにかかるお金を並べて比べると、違いがわかりやすくなります。
| かかる お金 | セット アップ | 居抜き |
|---|---|---|
| 入居の とき | 敷金、 家具の 買い足し | 敷金、 造作の 代金、 工事 |
| 入居中 | 賃料・ 共益費 (内装の分 を含む) | 賃料・ 共益費 |
| 退去の とき | 傷めた部分 などの扱い (契約) | 引き継いだ 造作の 撤去など (取り 決め) |
敷金の月数は物件ごとに違うので、候補の物件で実際の条件を比べます。敷金の相場の考え方はオフィスの敷金相場で扱っています。契約の期間が短いほど、入居のときの費用を賃料に含めているセットアップの利点が出やすく、長く使うほど、自社で整えた内装を長く使える居抜きや通常の区画の利点が出やすくなります。

内見で確かめること
セットアップオフィスの場合
付いている家具や設備の一覧と状態、会議室や電話用の個室の数、インターネットの回線を用意してあるか自社で契約するか、を確かめます。家具を動かしてよいか、足してよいかも聞いておきます。退去のときに、どの状態で返せばよいか(家具の傷や床の跡の扱い)も、契約書や付属の書類で確かめます。
居抜きオフィスの場合
譲り受ける造作の一覧と状態、空調や照明などの設備の使った年数、前の借主の退去の日と引き渡しの日、造作を残すことについての貸主の了解を確かめます。間仕切りでつくった会議室がある場合は、火災報知器やスプリンクラーがその部屋にも付いているかを見ておきます。造作の代金と、次の退去のときにどこまで戻すのかは、あわせて取り決めます。
どちらが向いているか
セットアップオフィスが向いている会社
早く入居したい、入居の工事の手間や初期の費用を抑えたい、人数が増えたら数年で移ることも考えている、といった会社に向いています。貸主が用意した配置が自社の働き方に合っていれば、レイアウトを一から考える必要もありません。
居抜きオフィスが向いている会社
前の借主の内装や設備が自社の使い方に近い、自社で手を入れる前提で土台として使いたい、といった会社に向いています。会議室や受付、配線などがそのまま使えれば、入居の工事を大きく減らせます。一方で、前の借主の会社に合わせてつくられた内装なので、配置や雰囲気が自社に合うかは内見でよく確かめます。
探し方と、入居の前に確かめること
セットアップオフィスは、募集のときから内装付きとして案内されるので、条件で探しやすい形です。GOでは東京のセットアップオフィス一覧から探せます。居抜きオフィスは、前の借主の退去の予定に合わせて募集が出るため、時期によって選べる数が変わります。
どちらの場合も、東京消防庁の管内では、内装の工事をしなくても、使い始める日の7日前までに防火対象物使用開始届が要ります(防火対象物使用開始届と、オフィスの入居・内装工事で消防に出す届出)。レイアウトを変える工事をするなら、ビルの承諾や工事の区分も確かめます(パーテーション工事で確かめること)。
よくある質問
Q. セットアップオフィスと居抜きオフィスの一番の違いは何ですか?
内装を用意したのが、貸主か前の借主かです。セットアップは貸主が貸すためにつくった内装で、契約の相手は貸主だけです。居抜きは前の借主がつくった内装で、造作を引き継ぐなら前の借主とも取り決めが要ります。
Q. セットアップオフィスは賃料が高いのですか?
内装を用意する費用を貸主が持つので、賃料に内装の分が含まれていると考えるのが自然です。GOに掲載している東京の10坪以上の空室では、賃料を公開している区画の坪単価の中央値がセットアップ28,000円、それ以外22,000円でした。ただし、立地や広さの違いも混ざった比較です。
Q. 居抜きオフィスは、退去のときに原状回復が要りませんか?
契約によります。引き継いだ造作まで撤去してスケルトンに戻す取り決めもあれば、次の借主にそのまま引き継げる取り決めもあります。入居の前に、貸主と書面で決めておいてください。
Q. セットアップオフィスでも、内装を変えられますか?
家具の置き方を変えることはできる場合が多い一方、内装を変える工事は貸主の承諾が必要で、退去のときに元に戻す費用がかかることもあります。どこまで変えられるかは物件ごとに違うので、契約の前に確かめてください。
Q. 居抜きオフィスの造作に、お金はかかりますか?
前の借主から造作を買い取る場合は、代金がかかります。代金は造作の状態や退去のときの取り決めで変わり、交渉で決まります。税金の扱いは造作譲渡とはで扱っています。
まとめ
セットアップオフィスと居抜きオフィスは、どちらも内装の工事をせずに入居しやすいオフィスですが、内装を用意したのが貸主か前の借主かで、契約の相手と費用、退去のときの扱いが変わります。セットアップは貸主との契約だけで済み、内装の費用は賃料などに含まれます。居抜きは前の借主との造作譲渡の取り決めが加わり、次の退去での原状回復の範囲を貸主と決めておく必要があります。
早く、手間をかけずに入居したいならセットアップ、前の借主の内装を土台に自社で手を入れたいなら居抜きが候補になります。どちらを選ぶ場合も、退去のときの扱いまで契約の前に確かめておくと、あとで困りません。